至上最幸の恋
 いや、食っていくのすら怪しいな。この旅行で、また金欠に拍車がかかっている。
 しかし食費を削ってでも旅をすることが、オレにとっては重要だった。

「そういえば、昨日はちゃんとプレゼントを買っていったのか?」
「ああ。でも渡すのを忘れた。だから今日会ったら、すぐに渡す」

 すると、ラウロが大袈裟に肩をすくめた。

「会ってすぐに? そんなのダメだよ。エイシは女心を分かっていないね」
「そんなの分かるもんか。エスパーじゃあるまいし」
「女性のためなら、エスパーにならなくちゃ」

 無茶なことを言うもんだ。こちとら、イタリア人みたいにレディーファーストを叩き込まれて育ったわけじゃない、生粋の日本人なんだぞ。まして相手は10代だ。オレのようなオッサンが、エスパーになれるわけがない。

「いいかい? 女性に荷物を持たせたらいけないよ。プレゼントは、帰り際に渡すんだ。楽しい時間を過ごせたお礼だよってね」
「最後にすると、忘れるだろうが」
「愛があるなら忘れるわけがないよ」
「出会ったばかりで、愛もへったくれもあるか。日本人はな、奥ゆかしいんだよ」
「ときには情熱も必要だよ」
 
 これだからイタリア人は。キザな言葉で愛を囁けば、すべてうまくいくとでも思っているのか。
< 32 / 80 >

この作品をシェア

pagetop