至上最幸の恋
 いずれにしても、喜んでもらえたのならひと安心だ。エスパーにはなれなかったが、ひとまず良しとしよう。

「んじゃ、出るか」

 店員にアイコンタクトを取り、席で会計を済ませる。自分が支払うと言い出すかと思ったが、エリサは黙っていた。

 しかしザッハトルテと紅茶のセットが、あの宿の1泊の料金をはるかに上回るとは。毎月、いかに食費を削るか考えている人間が手を出すものじゃないな。

 そう思いながら店を出たところで、エリサが口を開いた。

「あの、今日は私がお支払いいたします」
「いいよ。モデルをしてもらうわけだし」
「いえ、そのつもりでお誘いしましたから。そういうわけにはまいりませんわ」

 そうか。さっき言い出さなかったのは、オレの顔を立てたからだな。そのあたりも、きちんとしているようだ。

「それじゃあ、明日また紅茶を淹れてきてくんねぇかな」

 押し問答するのも面倒なので、別案を提示した。

「お紅茶、ですか?」
「ああ。日本じゃ、なかなか飲めねぇからさ。また淹れてきてもらえると嬉しい」
「分かりました、お安い御用ですわ!」

 案外、あっさりと引き下がってくれた。意固地にならないところも好感が持てる。
 相手を不快な気持ちにさせない対応が染みついているのか、それとも天性のものなのか。
< 45 / 83 >

この作品をシェア

pagetop