至上最幸の恋
 慧は昔から、オレの絵を気に入ってくれている。だからドライバーの仕事が忙しくて、絵を描く時間や気力がなくなることを心配しているらしい。

 ただ、オレは企業担当なので、夜間の配達はなく19時には退勤している。基本的に日祝が休みなのもあって、どうにか画業と両立できていた。

「絵はちゃんと描いているよ。今度の日展にも出すつもりだしな」

 日展は日本画・洋画・彫刻・工芸美術・書の5部門からなる、日本最大級の総合公募美術展だ。

 日本最高峰の美術展とされていて、入選作品の中から文部科学大臣賞、東京都知事賞、日展会員賞などが選出される。

 特選に選ばれたことはあるものの、まだ画家として安定した収入は得られていない。もっと自分らしく、自分にしか描けない絵を生み出せないと、多くの作品に埋もれてしまうだろう。

「お前の絵が注目を浴びないなら、世の中おしまいだなぁ」
「どうせ、あと7年で人類は滅びるだろ」
「ノストラダムス、信じているのかよ」
「そんなわけねぇだろ」

 軽口を叩きながら、カレーを胃に流し込む。
 この味は先代のときから変わらない。本格的な欧風カレーをベースとして、牛肉の旨味や香味野菜の甘み、そしてスパイスの香りが絶妙に融合した深みのある味わいだ。
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