至上最幸の恋
 毎日食べても飽きないこのカレーと、食後の紅茶。これがコレットでのオレの定番だった。

「この味は、本当に変わらねぇよな」

 思わず呟くと、慧が目を細めた。

 コレットには、慧と知り合った高校のときから頻繁に通っている。まるで時間が止まったかのような不思議な感覚に陥るので、つい長居してしまうほど居心地がいい。

 普段は軽薄そうに見える慧が引き継ぐと言い出したのは意外だったが、こいつも同じように感じていたのかもしれない。

「味を守っていくってのは、結構大変なんだ。ありがたく食えよ」
「毎日、よーく味わっているよ。親父さんが残した大切な味だからな」
「死んだみたいな言い方すんなよ」

 最近は顔を見ていないが、慧の両親は健在だ。50代半ばという早めのリタイアで、いまは悠々自適らしい。

 もうすぐ慧には子どもが生まれるし、初孫に目尻が下がりっぱなしの日々になるのだろう。

「親父さんには世話になったし、なにか返してぇんだけどな」
「じゃあ、早く画家として大成することだな。それが一番の恩返しだよ」

 もっと絵を描け。そう言われている気がした。

 下手くそな愛想笑いをしながら荷物を運ぶ毎日など、性に合うわけがない。そんなことは、自分がよく分かっていた。
< 55 / 80 >

この作品をシェア

pagetop