至上最幸の恋
本当なら、生活費など二の次で、ひたすら絵を描いていたい。どれだけ困窮したとしても。
しかしいまは、それができない理由があった。
自分で選んだ道だ。後悔はないが、自分も時代のうねりに飲まれて沈んでしまうのではないかという不安が、いつもつきまとっていた。
毎日が、漂う雲のように、ただ流れていく。そんな感覚の中で、この日もいつものように仕事を終えて、日暮里の自宅に帰った。
「おかえりなさい」
玄関を開けると、妻の律が出迎えてくれた。親の勧めで渋々見合いをして、半年前に結婚した相手だ。
彼女も働いてはいるが、零細企業の事務員で、稼ぎが多いわけではない。オレがドライバーを辞めてしまうと、ふたりでの生活は成り立たないだろう。家族への責任が生じたことで、画家としての活動よりも収入を優先するようになった。
「お風呂、湧いてるよ」
「あぁ、ありがとう」
台所から、味噌汁の香りが漂ってきた。いつもオレの帰宅時間に合わせて風呂を沸かし、食事の支度をしてくれている。本当にありがたいことだと思う。
ただ、愛情があるわけではない。
彼女は薄化粧で控えめながらも、自分の考えをしっかり持っている。そういうところに好感は抱いたものの、結婚する気は一切なかった。両家の親に押し切られただけだ。
しかしいまは、それができない理由があった。
自分で選んだ道だ。後悔はないが、自分も時代のうねりに飲まれて沈んでしまうのではないかという不安が、いつもつきまとっていた。
毎日が、漂う雲のように、ただ流れていく。そんな感覚の中で、この日もいつものように仕事を終えて、日暮里の自宅に帰った。
「おかえりなさい」
玄関を開けると、妻の律が出迎えてくれた。親の勧めで渋々見合いをして、半年前に結婚した相手だ。
彼女も働いてはいるが、零細企業の事務員で、稼ぎが多いわけではない。オレがドライバーを辞めてしまうと、ふたりでの生活は成り立たないだろう。家族への責任が生じたことで、画家としての活動よりも収入を優先するようになった。
「お風呂、湧いてるよ」
「あぁ、ありがとう」
台所から、味噌汁の香りが漂ってきた。いつもオレの帰宅時間に合わせて風呂を沸かし、食事の支度をしてくれている。本当にありがたいことだと思う。
ただ、愛情があるわけではない。
彼女は薄化粧で控えめながらも、自分の考えをしっかり持っている。そういうところに好感は抱いたものの、結婚する気は一切なかった。両家の親に押し切られただけだ。