至上最幸の恋
 律にも、オレへの愛情があるようには感じられない。25歳を過ぎても独身だったことに、多少なりとも焦りがあったのだろう。一応定職に就いていて、それなりの収入がある男を冷静に選んだという感じだ。

 それでも、結婚生活は意外と平穏だった。
 愛情がいらないとまでは言わないが、一緒に生活するために必要不可欠なものではないようだ。

「今日のお昼も、コレットのカレーだったの?」
「ああ。空いているしな」
「あなたがいつもお昼に食べてくるから、夕飯はカレー以外にしないといけないのよね」

 笑顔ではあるものの、不満なのか冗談なのか判然としない。
 律はこういう物言いをすることが多くて、本心があまり見えなかった。

 夫婦とはいえ、もともとは他人だ。しかも見合い結婚で交際期間がほとんどなかったので、互いのことはまだ深く理解できていない。

 もしかすると、なんとなく上辺を合わせているから平穏なのか。だとしたらオレたちは、ただ「夫婦ごっこ」をしているだけかもしれない。

 夜の営みは一応あるものの、オレが遅くまで絵を描いてそのまま寝ることも多いので、新婚にしては淡白だと思う。

「まだ描くの?」

 なんとなく呆れたような、少し小馬鹿にしたような。そんな感じで、いつもこういわれていた。
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