至上最幸の恋
 スケッチブックの真っさらなページを開き、鉛筆を走らせる。なにかに追い立てられるように、無我夢中で描き続けた。

 内側から溢れそうになるほどの衝動を感じたのは、久しぶりだ。あのとき以来か。確かに、運命の人だったのかもしれないな。

 オレが求める、普遍の美。きっと描けるはずだ。その情熱と衝動だけで、手を動かした。

 しかし、アラームの音で集中力が断ち切られる。夜中の2時だった。

 ドライバーとして、睡眠不足は決して許されない。だからいつもアラームをセットしているが、いまほど、その音に苛立ちを感じたことはない。

 オレはなにをしているんだ。なんのためにドライバーの仕事をしているのか。

 絵を描くためのはずなのに、いつの間にか足枷になっている。それならいっそのこと潔く辞めて、絵に集中すべきか。

 いや、律はどうする。絶対に反対するはずだ。結婚したばかりなのに、そんな思いをさせるのか。
 この先、子どもができるかもしれない。そうすると、なおさら仕事が辞められなくなる。

 一体、なにが正解なのか分からない。ただひとつ言えるのは、絵を描くのを辞める選択肢は絶対にないということだ。

「……続きは明日だな」

 気持ちを整えるために、そう呟く。
 そして、すでに律が熟睡しているであろう寝室へと向かった。
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