至上最幸の恋
「謝る必要はねぇよ」
「でも、怒っていらっしゃいませんか? モデルを投げ出してしまったのに……」

 まるで叱られた子どものようだな。3年間、こんな思いを抱えさせていたのだとしたら、こちらのほうが申し訳ない気持ちになる。

「怒ってねぇよ。エリサになにかあったんじゃねぇかって、心配はしたけどな」
「すみません……」
「だから、謝るなって。こうして元気な顔が見られたわけだし、それで十分だよ」

 すると、まだ俯いたままのエリサの肩を、桂木さんが優しく叩いた。

「せっかく再会できたのに、そんな顔ばかりしていたらもったいないよ」

 そのひと言で、エリサが顔を上げる。
 まだ不安げな彼女に笑いかけると、ようやく表情が緩んだ。

「君がここで浅尾君の絵を見つけたとき、やっと出会えたという顔をしていたね。ほかのギャラリーも探し回っていたのかな?」
「はい。2か月前にこちらへ帰国したのですが、公演や撮影の合間を縫って、ギャラリーを回っておりました」
「公演や撮影?」

 思わず尋ねると、桂木さんが意外そうにオレを見た。

「知らないのかい? エリサ・ラハティさんと言えば、いまをときめく若手ピアニスト兼モデルさんだよ。2年前のショパンコンクールで4位に入賞して、話題になっていただろう」

 そうなのか。オレはテレビや雑誌にまったく触れない生活をしているので、そういう情報には疎かった。
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