至上最幸の恋
 ……ん? ピアニスト兼モデル?
 そういえば、エリサとそういう会話をした記憶があるな。あのとき、オレがなにげなく言ったことを実現させたというのか。

「ショパンコンクールは、確か若手ピアニストの登竜門だよな。オレでも聞いたことがあるぞ。それで4位に入るとか、すげぇな」
「そんな。ピアニストもモデルも、まだ駆け出しですわ」

 エリサが頬を赤らめる。
 謙遜しているが、相当努力したのは間違いないだろう。3年前は自分の未熟さに打ちのめされているように見えたので、少し安心した。

「エリサに比べて、オレはまったく名前が売れていないからな。探すのは大変だっただろう」
「なにを言っているんだよ、浅尾君」

 桂木さんが湯呑みを置いて、拳を握りしめた。

「君の絵は、じわじわと評判を呼んでいるんだよ。画壇で浅尾瑛士の名前を知らない人間はいないさ」
「やっぱり、そうですわよね!」

 今度はエリサが拳を握りしめる。
 画壇でオレを知らない人間がいないというのは、かなり誇張しているな。そんなはずはない。

「瑛士さんの日本画は初めて拝見しましたが、とても心が震えました!」
「そうだろう? 僕もね、彼の絵には、とてつもない懐の深さを感じていてね。必ず世界の絵画ファンを虜にするはずだよ」

 少し褒めすぎじゃないか。目の前でここまで言われると、むず痒い。
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