至上最幸の恋
「3年前、せっかく私を描いてくださっていたのに中途半端になってしまい……それがとても心残りでした。今回は正式な依頼なので、制作費をお支払いします。事務所の許可も得ているので、どうかお願いします!」

 事務所というのは、モデル事務所のことだろうか。いろいろと権利が絡んでくると思うが、オレのように無名の画家がモチーフにする程度であれば、問題ないのかもしれないな。

 ただ、制作費を受け取るわけにはいかない。もともとはオレが描かせてほしいと言い出したわけだし、知名度のあるエリサをモデルにするなら、本来はこちらが料金を支払うべきだろう。

「制作費なんていらねぇよ」
「ですが、きちんとした依頼なので」
「もう勝手に描き始めているからな」
「え?」

 エリサが目を瞬かせる。その少女のようなしぐさも、3年前からちっとも変わっていない。
 
「昔のスケッチブックを見て、描きたくなってな。次の日展に出す予定で制作中なんだよ」
「そんな大規模な公募展に、私の絵を?」
「権利的に、なにか問題がありそうか? もしモデル料が必要なら……」
「いえ、それは大丈夫ですわ。グッズを作って売り出すようなことをしなければいいと、事務所からは言われております」

 よかった。エリサの知名度がどれほどなのかは分からないが、画材以外の出費はできるだけ避けたい。
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