【番外編更新】虐げられた私の身代わり婚約、そして見つけた幸せ
 あら、彼女は私が王国から嫁いできたという事は知っているのね。てっきりどこの馬の骨……とでも言うのかと思ったのだけれど。それよりも大声でそんな話をして良いのかしら? だって、この婚約は皇帝陛下の承認があって結ばれた婚約よ。彼女は皇帝陛下の裁量を否定している形になっているけれど。
 ……ほら、公爵様も怒っているじゃない。

「この婚約は皇帝陛下も承認されている婚約だ。ディロン伯爵令嬢は、皇帝陛下の命に異を唱えるという事でよろしいか?」

 ここまで言われて、やっと彼女は自分が何を言ったのかを理解したらしい。顔から血の気が引いている。それでも私へと刺すような視線を送ってくるあたり、自分が正しいと思っているのよね、きっと。
 この方、表情も読みやすいし……言動も少し幼稚な気がするわ。貴族社会で生きていけないと思うけど、良いのかしら。まぁ、私が心配する事でもないわね。

 すると後ろから声がかかった。

「レオネル殿、私の娘がすまない事をしたね。どうやら君に会いたがって、先走ってしまったようだ」

 後ろから現れたのは、ディロン伯爵だ。彼は口元の立派な髭に触れつつ、笑ってこちらへと歩いてくる。娘を回収しにきたのかもしれない。公爵様は、ディロン伯爵を冷めた目で見つめている。

「ははは、大目に見てくれると嬉しいよ。婚約者殿も娘のような気持ちを持った事があるだろう?」

 どうやら伯爵は、公爵様がまだ爵位を継いでいない次期公爵であると思っているのかもしれない。もし公爵本人だと分かっていたら、こんな口調で話すはずないでしょう?

 笑いながら伯爵は令嬢に声をかける。名残惜しそうにしているけれど、伯爵には逆らえないようで大人しく帰っていく。ただ、私への視線は冷淡だ。私に圧を掛けてくる娘と、彼女の意思を押し通そうとする伯爵。彼らが真実を知った時、どうするのだろうか。
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