【番外編更新】虐げられた私の身代わり婚約、そして見つけた幸せ
「という話がございまして。公爵様にご報告させていただきました」

 夜、公爵様の執務室。
 私は昼間の出来事を公爵様に話していた。彼は報告を聞きながら、眉間を揉んでいる。
 この場にはヘンリーと私、そして公爵様の三人だけだ。盗聴の可能性を鑑みて、防音の魔道具を起動している。後ろにいるヘンリーは目を細めてこちらを見ていた。

「なるほど、教えてくれて助かった……エスペランサ嬢には迷惑をかけたな」
「いえ。ご報告するのは私の義務だと思っておりますので」

 私は公爵様の婚約者。ブレンダも言っていたではないか。『郷には郷に従え』と。だから私は、公爵様に追い出されない限りは、この地に骨を埋めるつもりなのだから。
 そのためには公爵様と信頼関係を積み重ねていかなければならない。その上で有効なのが、報告・連絡・相談だと私は思うのだ。
 公爵様は思うところがあるのか、私の報告を聞いた後は物思いに耽っている。しばらく思い悩んでいた後、「ああ、すまない」と顔を上げた。
 その時私はふと頭の中に浮かんだ疑問があったので、公爵様に声をかけた。
 
「あの、ひとつよろしいでしょうか?」

 私の言葉に公爵様は驚いた表情を見せながらも、ひとつ頷く。許可を得たと私は、質問をぶつけた。
 
「ディロン伯爵様は、何故私にこのような提案をされたのでしょうか? あの方は私が公爵様へと報告をするはずがないと考えているようなのですが……」

 私がこの件を公爵様に黙っているとでも思ったのだろうか。その点がなんだか腑に落ちないと正直に伝える。
 すると公爵様はその事については、理由が分かっているようだった。
 
「伯爵は君のことをブレンダだと思っているからだろう」
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