この夜の意味〜声にできない恋を隠したら、完全無欠な御曹司の本気スイッチ入りました〜(旧:RISKY〜不敵な御曹司との恋は避けるべき〜)
彼からすれば、じゃあ何を知りたくて会見に来たのか、と疑問に思うのも当然だ。
「そうですね。確たる証拠はないですし。記者として悔しい限りですが、どの報道もすべて噂止まりかと…」
このままでは完全に怪しまれてしまう。どうにか話をはぐらかさなければと次の言葉を考えるが、彼から出てきた言葉は予想とは異なるものだった。
「じゃあ君はなぜ、僕がこんなにも疑われると思います?」
「なぜ、といわれましても。記者たちはみな、少し接点があるだけで、まるで親密であるかのように結びつけようとします。社長は少し…」
「少し、なんだ?気にせず正直に言ってくれて構わないよ」
「少し、隙がありすぎかと…」
「隙、か。やはり君に声をかけた判断は、間違っていなかったようだね」
まるで狙った魚を逃さないと言わんばかりに、彼はこちらを煽り立ててくる。
「君が欲しいと望んだものは、素直に渡しましたよね。なら次は、僕の頼みを聞いてもらう番です」
「言われなくてもそのつもりです。何ですか、頼みって」
「僕の身辺に関するリスク管理をお願いしたい。報酬は、そうだな。今もらっている分の2倍、いや3倍は支払わせてもらいます」
身辺のリスク管理、その要望は正直想像もしていなかった。
だって彼は日本経済を回す、このグループのトップだ。周囲には普段からSPや警備員といった、彼の身を守ってくれる人がゾロゾロとついて回る。
「お言葉ですが、SPを雇ったり警備を強化された方が、よっぽど頼りになるんじゃないですか?」
そんなの分かり切ってると言わんばかりに、彼は腕を組みながら、左右に首を振り動かす。
「それはもう、とっくに手を打ってあります。でも、またこうやって付き合ってるだのなんだの、出てしまっているわけです。いま僕に足りていないのは、リスクとなり得る行動をすべて改めることだ。危険を嗅ぎつけるなんて、君たち記者が一番得意とすることでしょう?」
すべてを伝えきり満足したのか、すくっと立ち上がると、彼はまた重々しい黒のジャケットに腕を通す。
「本当なら、今すぐ君の返事が欲しいんだけどね。君に使ってあげられる時間はここまでのようです。もし僕のもとで働く意思があるのなら、明日の朝9時。この部屋で待っているから」
そうして私はポツンと一人、広大な部屋に取り残された。目の前の獲物にすぐ飛びかかってしまうような単純な人間なら、この一瞬の隙を狙って彼を引きずり下ろそうとするだろう。
ただ私はそんな出来心で、この二十年を水の泡にしたくはない。振り返ることなく、まっすぐ社長室を後にする。
「そうですね。確たる証拠はないですし。記者として悔しい限りですが、どの報道もすべて噂止まりかと…」
このままでは完全に怪しまれてしまう。どうにか話をはぐらかさなければと次の言葉を考えるが、彼から出てきた言葉は予想とは異なるものだった。
「じゃあ君はなぜ、僕がこんなにも疑われると思います?」
「なぜ、といわれましても。記者たちはみな、少し接点があるだけで、まるで親密であるかのように結びつけようとします。社長は少し…」
「少し、なんだ?気にせず正直に言ってくれて構わないよ」
「少し、隙がありすぎかと…」
「隙、か。やはり君に声をかけた判断は、間違っていなかったようだね」
まるで狙った魚を逃さないと言わんばかりに、彼はこちらを煽り立ててくる。
「君が欲しいと望んだものは、素直に渡しましたよね。なら次は、僕の頼みを聞いてもらう番です」
「言われなくてもそのつもりです。何ですか、頼みって」
「僕の身辺に関するリスク管理をお願いしたい。報酬は、そうだな。今もらっている分の2倍、いや3倍は支払わせてもらいます」
身辺のリスク管理、その要望は正直想像もしていなかった。
だって彼は日本経済を回す、このグループのトップだ。周囲には普段からSPや警備員といった、彼の身を守ってくれる人がゾロゾロとついて回る。
「お言葉ですが、SPを雇ったり警備を強化された方が、よっぽど頼りになるんじゃないですか?」
そんなの分かり切ってると言わんばかりに、彼は腕を組みながら、左右に首を振り動かす。
「それはもう、とっくに手を打ってあります。でも、またこうやって付き合ってるだのなんだの、出てしまっているわけです。いま僕に足りていないのは、リスクとなり得る行動をすべて改めることだ。危険を嗅ぎつけるなんて、君たち記者が一番得意とすることでしょう?」
すべてを伝えきり満足したのか、すくっと立ち上がると、彼はまた重々しい黒のジャケットに腕を通す。
「本当なら、今すぐ君の返事が欲しいんだけどね。君に使ってあげられる時間はここまでのようです。もし僕のもとで働く意思があるのなら、明日の朝9時。この部屋で待っているから」
そうして私はポツンと一人、広大な部屋に取り残された。目の前の獲物にすぐ飛びかかってしまうような単純な人間なら、この一瞬の隙を狙って彼を引きずり下ろそうとするだろう。
ただ私はそんな出来心で、この二十年を水の泡にしたくはない。振り返ることなく、まっすぐ社長室を後にする。