この夜の意味〜声にできない恋を隠したら、完全無欠な御曹司の本気スイッチ入りました〜(旧:RISKY〜不敵な御曹司との恋は避けるべき〜)
「正面から入ると目立ちますから。社長が到着される時間を見越して、待っていたんです」
私がそう言うと運転席の男性に何やら声をかけて、そそくさと車から降りてくる。
「外じゃ人目につくから、ひとまず中に入ろうか」
朝が弱いからなのか、自分のペースを乱されたことに腹を立てているのか。歩くスピードも速ければ、声のトーンも一段と低い。
一度も足を止めることなく、社長のみが使用を許された専用のエレベーターへと直行する。そしてここなら安全だと判断したのか、矢継ぎ早に疑問を投げかけてくる。
「それで?君はすべて分かった上で、あの場に居たんですか?」
「なんで?って顔していますね」
「昨日の仕返しですか?まあね。ここまで把握されているとは思わなかったけど。でも、やはり頼りにはなりそうだ」
こちらはすでに戦闘体制が整っているというのに、なかなか本題に入ろうとしない。今か今かと時を見計らっていると、ついにその質問が飛んでくる。
「いま君はここにいる。ということは、僕のためにその力を貸してくれるんだね?」
「はい」
「記者の仕事はどうする?」
「やめます」
それまでポンポンと質問が飛んできていたが、今になって静かな間が生まれる。
「そんな簡単に決めてしまって良いものなのか?」
「かまいません。この仕事に思い入れがあるわけでもないので」
「僕にはそんなふうには見えなかったが。まあ、君がそう言うのなら良いんだが」
エレベーターが最上階で開くと、一度見たら忘れないコーヒー色のスーツを着た男が視界に飛び込んでくる。
「この方は、どこかで…?あ、昨日の!まさか社長、彼女を部屋に連れ込んで丸め込もうと?それ、本当に問題になるやつですよ!」
動揺を隠せない男を相手にもせず、宗高は足取りを止めない。
「秀明、少し落ち着け。お前にも報告しておくよ。今日から僕のリスク管理をしてもらうことになった。望月文乃さんだ」
「望月です。よろしくお願いします」
「えっと、村上です。」
少しでも印象を良くしようと丁寧に挨拶をする。そんな私をよそに、村上という男は簡単に挨拶を切り上げて、何やら耳打ちをしているようだ。
「社長!彼女に一体何ができるっていうんですか?」
小声だから聞かれていないと思っているようだが、こちらにははっきりと聞こえている。かなり警戒されているようだから、まずは役に立つところを見せなければ。
「社長。今日、どなたかとお会いになる予定はございますか?」
「秀明、教えてやってくれ」
村上くんはどうも納得できないようだが、社長秘書の彼にとって主人の命にはどんなときも逆らえない。
「はぁ…今日の社長は終日社内業務。夕食時には新藤社長との会食が予定されています」
東条グループと新藤グループは、前社長同士が大学時代の同級生。その繋がりから長きに渡って両者が業務提携を行ってきたことは有名な話だ。
「新藤社長って、新藤京子のことですか?」
「そうだ。だが、そんなことを聞いてどうする?」
「その会食、どうにかリモートに出来ませんか?」
「リモート?それは、画面越しに話すということか?その提案は受け付けられないな。新藤とは、先代のときから会食を通じて互いの腹を探り合ってきた。それに今日使う店だって、父の代から贔屓にしているところだから、何も心配ないはずだ」
また先代の話だ。確かに彼の言葉一つ取っても、「理想通りに育ってくれた」という言葉の真意がよくわかる。
「会食とはいえ、密会は密会です。誰ひとりお二人が会ったことを漏らさない、という確証はありません。お言葉ですが、社長の疑惑はほとんどが関係者の一言から出てきたものですよ。もはやどこから火種が生まれるかなんて、こちらからは想像もできません。せめて、世間のほとぼりが冷めるまで。直接お会いになられるのは控えるべきかと」
割って入る隙がないくらい、つらつらと異議を唱える私に押されて、彼も腹を括ったようだ。
「秀明。僕が直接説明するから、一本電話をかけてくれ」
「どうなっても知りませんからね」
そう口ではぼやきをこぼしながら、従順に受話器に手をかける。
「社長。お電話つながりました」
宗高は一つ咳払いをして、受話器を受け取る。
私がそう言うと運転席の男性に何やら声をかけて、そそくさと車から降りてくる。
「外じゃ人目につくから、ひとまず中に入ろうか」
朝が弱いからなのか、自分のペースを乱されたことに腹を立てているのか。歩くスピードも速ければ、声のトーンも一段と低い。
一度も足を止めることなく、社長のみが使用を許された専用のエレベーターへと直行する。そしてここなら安全だと判断したのか、矢継ぎ早に疑問を投げかけてくる。
「それで?君はすべて分かった上で、あの場に居たんですか?」
「なんで?って顔していますね」
「昨日の仕返しですか?まあね。ここまで把握されているとは思わなかったけど。でも、やはり頼りにはなりそうだ」
こちらはすでに戦闘体制が整っているというのに、なかなか本題に入ろうとしない。今か今かと時を見計らっていると、ついにその質問が飛んでくる。
「いま君はここにいる。ということは、僕のためにその力を貸してくれるんだね?」
「はい」
「記者の仕事はどうする?」
「やめます」
それまでポンポンと質問が飛んできていたが、今になって静かな間が生まれる。
「そんな簡単に決めてしまって良いものなのか?」
「かまいません。この仕事に思い入れがあるわけでもないので」
「僕にはそんなふうには見えなかったが。まあ、君がそう言うのなら良いんだが」
エレベーターが最上階で開くと、一度見たら忘れないコーヒー色のスーツを着た男が視界に飛び込んでくる。
「この方は、どこかで…?あ、昨日の!まさか社長、彼女を部屋に連れ込んで丸め込もうと?それ、本当に問題になるやつですよ!」
動揺を隠せない男を相手にもせず、宗高は足取りを止めない。
「秀明、少し落ち着け。お前にも報告しておくよ。今日から僕のリスク管理をしてもらうことになった。望月文乃さんだ」
「望月です。よろしくお願いします」
「えっと、村上です。」
少しでも印象を良くしようと丁寧に挨拶をする。そんな私をよそに、村上という男は簡単に挨拶を切り上げて、何やら耳打ちをしているようだ。
「社長!彼女に一体何ができるっていうんですか?」
小声だから聞かれていないと思っているようだが、こちらにははっきりと聞こえている。かなり警戒されているようだから、まずは役に立つところを見せなければ。
「社長。今日、どなたかとお会いになる予定はございますか?」
「秀明、教えてやってくれ」
村上くんはどうも納得できないようだが、社長秘書の彼にとって主人の命にはどんなときも逆らえない。
「はぁ…今日の社長は終日社内業務。夕食時には新藤社長との会食が予定されています」
東条グループと新藤グループは、前社長同士が大学時代の同級生。その繋がりから長きに渡って両者が業務提携を行ってきたことは有名な話だ。
「新藤社長って、新藤京子のことですか?」
「そうだ。だが、そんなことを聞いてどうする?」
「その会食、どうにかリモートに出来ませんか?」
「リモート?それは、画面越しに話すということか?その提案は受け付けられないな。新藤とは、先代のときから会食を通じて互いの腹を探り合ってきた。それに今日使う店だって、父の代から贔屓にしているところだから、何も心配ないはずだ」
また先代の話だ。確かに彼の言葉一つ取っても、「理想通りに育ってくれた」という言葉の真意がよくわかる。
「会食とはいえ、密会は密会です。誰ひとりお二人が会ったことを漏らさない、という確証はありません。お言葉ですが、社長の疑惑はほとんどが関係者の一言から出てきたものですよ。もはやどこから火種が生まれるかなんて、こちらからは想像もできません。せめて、世間のほとぼりが冷めるまで。直接お会いになられるのは控えるべきかと」
割って入る隙がないくらい、つらつらと異議を唱える私に押されて、彼も腹を括ったようだ。
「秀明。僕が直接説明するから、一本電話をかけてくれ」
「どうなっても知りませんからね」
そう口ではぼやきをこぼしながら、従順に受話器に手をかける。
「社長。お電話つながりました」
宗高は一つ咳払いをして、受話器を受け取る。