この夜の意味〜声にできない恋を隠したら、完全無欠な御曹司の本気スイッチ入りました〜(旧:RISKY〜不敵な御曹司との恋は避けるべき〜)
今まで近づいた目的について何も聞いてこなかったから、てっきり気にも留めていないんだとばかり思っていた。でも、今わかった。彼はずっと引っかかっていたけど、あえて聞かずにいたんだ。

いつもならすぐに言葉を重ねてくるくせに、ベッドのふちにどっしりと腰掛けて、じっと私の答えを待っている。これは私の答えを聞くまで、絶対に引かないつもりだ。

そんな彼の問いから逃れるように咄嗟にとった行動は、あまりに愚かな物だった。私の身がベッドから乗り出して視線がぶつかり合うと、彼は驚いた表情で固まっている。

ああ、彼が後ずさるでもなんでもしてくれたらよかったのに。彼がピクリとも動かないから、私のあり得ない行動も留まることを知らなかった。

その顔が横にそれてしまわないように、つむんだ唇を力一杯にくっつけてしまう。確かに重なり合っているのに、まるでぶつかり合うみたいに、互いが混じり合うことはない。

「お、いっ…!」

唇に残る確かな感触と、彼に強く突き放されたその痛みで、自分のしたことの重大さが真実味を帯びてくる。

「どういう、つもりだ?……」

ああ、私は何てことをしてしまったんだろうか。ごまかし方なんてもっと他にあっただろうに。

「君は何のために雇われているのか、理解しているはずだよな?」

あのたった数秒の間に起こした出来事が、自分でも到底理解できずに頭が真っ白になってしまう。

「ああ、分かった。君の目的はこういうことか」

「それはっ…!ちがい、ます……」

「じゃあ、なぜちゃんと言葉にしない?」

その声に温度はなく、まるで私を軽蔑するような冷たさがある。いま何かを言わなければ、誤解されたままになってしまうのはわかっている。でも、本当のことなんて言えるはずがない。

その間もずっと私から出てくる言葉を待ってくれていたが、あまりにも長く黙ったままだから、彼の中でも限界がきてしまったようだ。立ち上がった彼は、最後までこちらに顔を見せることもなかった。

顔なんか見なくても、呆れた声と怒りのこもったあの手の強さで、私が取り返しのつかないことをしてしまった、ということはよくわかる。初めからこの部屋に一人だったはずなのに、やけにその静けさが強烈に感じられた。
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