この夜の意味〜声にできない恋を隠したら、完全無欠な御曹司の本気スイッチ入りました〜(旧:RISKY〜不敵な御曹司との恋は避けるべき〜)
目を開けると見覚えのない天井が私の視界一面に広がる。やけに広いベッドは一人で寝るには寂しいくらいだ。
目を擦ってまだ夢の中じゃないかと悪あがきするけれど、そんな身勝手な考えを払うように、耳をくすぐる声がすぐそばから聞こえてくる。
「おはよう」
「お、おはようございます」
まるで起きてからずっと私のそばでそのときを待っていたように、彼は横になってこちらを向いたまましっかりとした声で言葉を続ける。
「よく眠れた?」
「は、はい……」
「それは良かった」
彼は私の髪を繰り返し撫で、額にはゆっくりと唇まで押し付けてくる。私たちが「本当に」そうであるように。
あまりにも自然に慣れないことをしてくるけれど、今の私はベッドの中から半分顔を出すので精一杯だ。
「……シャワー、浴びておいで?」
そんな様子を見かねて、彼は踏み込んでしまいそうになるところを立ち止まるように私のそばから離れていく。
「文乃」
「えっ…?」
「もう間違い、じゃ済まされないからね」
皺が目立つワイシャツを着た彼の言葉が、シーンとした明け方の部屋に取り残される。これだけ愛する人に向けられるようなことを繰り返されると、本当に自分のいる位置を勘違いしてしまいそうになる。
今まではただ、自分の正体を隠すだけでよかった。でもこれからは一つ間違えれば嵌まってしまうかもしれない、このリスクを避けていかなければならない。
床に落ちていたはずの紺のスーツは、枕元で丁寧に畳まれていた。でも、私がよがったことで生まれた皺は隠しきていない。私はそのスーツを手に、シャワールームに向かった。
いっそのこともう二度としたくないと思うくらい乱暴に抱かれていれば、私の心は楽だっただろう。
でも、だいたい初めての朝は腰が鉛のように重いとか聞くけれど、なぜか不思議と体にはしんどさがない。もちろん出血もない。むしろぽっかりとあいた空間が寂しいとすら感じられる。今までだってずっと一人で、何不自由なく過ごせてこれたはずなのに。
自分で決めたことだけど、とにかく気の重い朝だ。そんな私の気分とは対照的に、皺一つないワイシャツに着替えた彼は鼻歌を歌いながらキッチンで何やらテキパキと動いている。
彼との記憶が一部始終残るこの部屋から離れさえすれば、私だってきっと元の自分に戻れるだろう。
「おっ、来たね!」
「シャワーありがとうございました。あの…社長。私、一旦帰りますね」
「ほら、おいで」
私の言葉をまるでなかったように、強引に手を引かれてダイニングテーブルの前に立つと、彼の力が肩に加わりそのまま腰かけることになってしまう。
目の前の木目調のダイニングテーブルには、こんがりと焼かれたトーストとベーコン。それに黄身がトロっとした目玉焼きとトマトとレタスのサラダが二人分、となり合うように置かれている。
「待ってたよ」
「社長、本当に私は…」
「じゃあ、僕はここに座ろうかな」
まるで私をそばから離れさせないと言わんばかりに、自分の椅子を隣にぴたりとくっつけてくる。
私は壁と彼に挟まれて逃げ道を失ってしまった。なるべく彼とは近づきたくないのに、ここに来てからずっと何かにつけて私のそばに彼の存在がある。
このリスクは防ぎようがないのかもしれない……と気づいたときにはもう時が遅すぎた。
目を擦ってまだ夢の中じゃないかと悪あがきするけれど、そんな身勝手な考えを払うように、耳をくすぐる声がすぐそばから聞こえてくる。
「おはよう」
「お、おはようございます」
まるで起きてからずっと私のそばでそのときを待っていたように、彼は横になってこちらを向いたまましっかりとした声で言葉を続ける。
「よく眠れた?」
「は、はい……」
「それは良かった」
彼は私の髪を繰り返し撫で、額にはゆっくりと唇まで押し付けてくる。私たちが「本当に」そうであるように。
あまりにも自然に慣れないことをしてくるけれど、今の私はベッドの中から半分顔を出すので精一杯だ。
「……シャワー、浴びておいで?」
そんな様子を見かねて、彼は踏み込んでしまいそうになるところを立ち止まるように私のそばから離れていく。
「文乃」
「えっ…?」
「もう間違い、じゃ済まされないからね」
皺が目立つワイシャツを着た彼の言葉が、シーンとした明け方の部屋に取り残される。これだけ愛する人に向けられるようなことを繰り返されると、本当に自分のいる位置を勘違いしてしまいそうになる。
今まではただ、自分の正体を隠すだけでよかった。でもこれからは一つ間違えれば嵌まってしまうかもしれない、このリスクを避けていかなければならない。
床に落ちていたはずの紺のスーツは、枕元で丁寧に畳まれていた。でも、私がよがったことで生まれた皺は隠しきていない。私はそのスーツを手に、シャワールームに向かった。
いっそのこともう二度としたくないと思うくらい乱暴に抱かれていれば、私の心は楽だっただろう。
でも、だいたい初めての朝は腰が鉛のように重いとか聞くけれど、なぜか不思議と体にはしんどさがない。もちろん出血もない。むしろぽっかりとあいた空間が寂しいとすら感じられる。今までだってずっと一人で、何不自由なく過ごせてこれたはずなのに。
自分で決めたことだけど、とにかく気の重い朝だ。そんな私の気分とは対照的に、皺一つないワイシャツに着替えた彼は鼻歌を歌いながらキッチンで何やらテキパキと動いている。
彼との記憶が一部始終残るこの部屋から離れさえすれば、私だってきっと元の自分に戻れるだろう。
「おっ、来たね!」
「シャワーありがとうございました。あの…社長。私、一旦帰りますね」
「ほら、おいで」
私の言葉をまるでなかったように、強引に手を引かれてダイニングテーブルの前に立つと、彼の力が肩に加わりそのまま腰かけることになってしまう。
目の前の木目調のダイニングテーブルには、こんがりと焼かれたトーストとベーコン。それに黄身がトロっとした目玉焼きとトマトとレタスのサラダが二人分、となり合うように置かれている。
「待ってたよ」
「社長、本当に私は…」
「じゃあ、僕はここに座ろうかな」
まるで私をそばから離れさせないと言わんばかりに、自分の椅子を隣にぴたりとくっつけてくる。
私は壁と彼に挟まれて逃げ道を失ってしまった。なるべく彼とは近づきたくないのに、ここに来てからずっと何かにつけて私のそばに彼の存在がある。
このリスクは防ぎようがないのかもしれない……と気づいたときにはもう時が遅すぎた。