この夜の意味〜声にできない恋を隠したら、完全無欠な御曹司の本気スイッチ入りました〜(旧:RISKY〜不敵な御曹司との恋は避けるべき〜)
目の前の彼は、着替え直した白シャツの裾をたくし上げ、お世辞にも美味しいとは言えない不出来なカレーを上手い、上手いと言いながら食べている。
私は、彼の放ったあの一言がどんなことを意味しているのか、あの何か含みがある笑顔の裏にはどんな思惑が隠されているのか、気になって気になって味わうどころではない。
「社長」
「どうした?」
「さっきの…どういう意味ですか?」
「何?気になる?」
「はい…」
「じゃあ、そのまま気にしてて」
「えっ?」
「そうしたら、僕は毎秒毎秒、こんなに君のことで頭がいっぱいなんだよ。って、嫌でも分かるでしょ」
自分の分を食べ終わると、次はほとんど手がつけられていない私の皿に盛られたそれを、子供のように狙ってくる。
「いらないの?僕、食べちゃうよ?」
そもそも彼に幻滅してもらうはずに作ったはずのカレーも、あっという間にペロリと平らげられている。
記者になってから、勘はかなり磨かれてきたはずだった。でも最近の彼はそんな私の予想とか、こうなるだろうという見通しも、ことごとく壊してくるから、正直もう手の打ちようがなくなっている。
食後、彼はソファに深く腰掛けて、思いっきり伸びている。
「ふぅ…久しぶりかも。こんなにゆっくり夕飯食べたの」
確かにこの家に来るまでは、彼がまともに食事をしているところを見たことがなかった。もう3か月近く毎日のように一緒にいるのに、だ。
そんな彼はこちらを見ながらポン、ポンと太ももを叩いているが、私には何のことだか全く検討がつかない。
「座って?」
「えっ?」
「5、4…」
急かすようにカウントダウンが始まるから、私は言われるがままに、彼の膝にちょこんと乗ってみせる。すると、それだけでは満足いかなかったようで、お腹の上に手を回され、そのまま彼の広い胸へグッと引き寄せられてしまう。
「君は、ほんと素直だよね」
頬と頬が擦れる距離感で、頭にはふわりと彼の大きな手が落ちてくる。この時間があまりに心地良くて、こんなに離れがたくなるくらいなら、一層のこと夢から早く覚めてしまいたいとすら思えてくる。
「社長が思うような人じゃないですよ、私は」
髪を行ったり来たりとしていた手の動きがぷつりと止まり、少しの間、何かを考えるように静寂が流れる。
「なんか、似てるんだよな……」
「似てるって、誰とですか?」
「ん?昔の僕と。何が起こっても怖くないように、最初から何もかも諦めてたなって……」
私は蓋をしていた傷口をグッと守るように、胸の前で手をきつく握り締めるが、その上に彼の温かな手も重なってくる。
「君がそうしたいなら、どれだけ自分を卑下したって構わない。僕はただ自分の目で見てきたものを信じるだけだから」
まるで泣き疲れた子供をあやすように、重なる手がトントンとリズムを刻みながら、ゆっくりとした横揺れが続く。
「でも何が君をそうさせたのかは、僕もちょっと気になるかな」
飛んで来た球は、あまりにも直球なもので思わずひるみそうになる。
「私ではなくて、もっと社長の話を…」
そう力を振り絞って、渾身の一撃を投げ返そうとしても、やっぱり今の彼には簡単にかわされてしまう。
「あのさ?その社長っていうのそろそろやめない?」
「えっ?」
「だって、僕だけ名前で呼ぶのはフェアじゃないでしょ」
「さっきからその、フェアって…」
いきなり抱きしめる腕の強さがギュッと強まるから、その力に負けて私の言葉も途切れてしまう。
「……やっぱり、僕は間違ってないと思うんだけどなぁ」
「何がですか?」
「ううん。ほら、君もシャワー浴びておいで」
そう言って、膝の上から強引に立ち上がらせられる。これじゃあ、また私は彼の手のひらで転がされているだけじゃないか。私はもう一度、話を戻そうと、意を決して振り向き様にこう叫ぶ。
「あのっ、社長!」
「ん?」
あんなに力強い言葉をくれた、その人の顔はなんだか妙に弱々しくて、私もそれ以上付け入ることはできなかった。
「いえ…」
私は、彼の放ったあの一言がどんなことを意味しているのか、あの何か含みがある笑顔の裏にはどんな思惑が隠されているのか、気になって気になって味わうどころではない。
「社長」
「どうした?」
「さっきの…どういう意味ですか?」
「何?気になる?」
「はい…」
「じゃあ、そのまま気にしてて」
「えっ?」
「そうしたら、僕は毎秒毎秒、こんなに君のことで頭がいっぱいなんだよ。って、嫌でも分かるでしょ」
自分の分を食べ終わると、次はほとんど手がつけられていない私の皿に盛られたそれを、子供のように狙ってくる。
「いらないの?僕、食べちゃうよ?」
そもそも彼に幻滅してもらうはずに作ったはずのカレーも、あっという間にペロリと平らげられている。
記者になってから、勘はかなり磨かれてきたはずだった。でも最近の彼はそんな私の予想とか、こうなるだろうという見通しも、ことごとく壊してくるから、正直もう手の打ちようがなくなっている。
食後、彼はソファに深く腰掛けて、思いっきり伸びている。
「ふぅ…久しぶりかも。こんなにゆっくり夕飯食べたの」
確かにこの家に来るまでは、彼がまともに食事をしているところを見たことがなかった。もう3か月近く毎日のように一緒にいるのに、だ。
そんな彼はこちらを見ながらポン、ポンと太ももを叩いているが、私には何のことだか全く検討がつかない。
「座って?」
「えっ?」
「5、4…」
急かすようにカウントダウンが始まるから、私は言われるがままに、彼の膝にちょこんと乗ってみせる。すると、それだけでは満足いかなかったようで、お腹の上に手を回され、そのまま彼の広い胸へグッと引き寄せられてしまう。
「君は、ほんと素直だよね」
頬と頬が擦れる距離感で、頭にはふわりと彼の大きな手が落ちてくる。この時間があまりに心地良くて、こんなに離れがたくなるくらいなら、一層のこと夢から早く覚めてしまいたいとすら思えてくる。
「社長が思うような人じゃないですよ、私は」
髪を行ったり来たりとしていた手の動きがぷつりと止まり、少しの間、何かを考えるように静寂が流れる。
「なんか、似てるんだよな……」
「似てるって、誰とですか?」
「ん?昔の僕と。何が起こっても怖くないように、最初から何もかも諦めてたなって……」
私は蓋をしていた傷口をグッと守るように、胸の前で手をきつく握り締めるが、その上に彼の温かな手も重なってくる。
「君がそうしたいなら、どれだけ自分を卑下したって構わない。僕はただ自分の目で見てきたものを信じるだけだから」
まるで泣き疲れた子供をあやすように、重なる手がトントンとリズムを刻みながら、ゆっくりとした横揺れが続く。
「でも何が君をそうさせたのかは、僕もちょっと気になるかな」
飛んで来た球は、あまりにも直球なもので思わずひるみそうになる。
「私ではなくて、もっと社長の話を…」
そう力を振り絞って、渾身の一撃を投げ返そうとしても、やっぱり今の彼には簡単にかわされてしまう。
「あのさ?その社長っていうのそろそろやめない?」
「えっ?」
「だって、僕だけ名前で呼ぶのはフェアじゃないでしょ」
「さっきからその、フェアって…」
いきなり抱きしめる腕の強さがギュッと強まるから、その力に負けて私の言葉も途切れてしまう。
「……やっぱり、僕は間違ってないと思うんだけどなぁ」
「何がですか?」
「ううん。ほら、君もシャワー浴びておいで」
そう言って、膝の上から強引に立ち上がらせられる。これじゃあ、また私は彼の手のひらで転がされているだけじゃないか。私はもう一度、話を戻そうと、意を決して振り向き様にこう叫ぶ。
「あのっ、社長!」
「ん?」
あんなに力強い言葉をくれた、その人の顔はなんだか妙に弱々しくて、私もそれ以上付け入ることはできなかった。
「いえ…」