この夜の意味〜声にできない恋を隠したら、完全無欠な御曹司の本気スイッチ入りました〜(旧:RISKY〜不敵な御曹司との恋は避けるべき〜)
シャワーから上がると、部屋の電気は消えていて、ソファに座っていた彼の姿もそこにはなかった。その空いたスペースで一晩を越そうと横になると、なぜか真っ暗なはずの部屋が途端に明るくなって、私は勢いよく体を起こす。

どうやら明かりをつけたのは彼らしい。上下グレーのスウェットで眠ろうとしていた私と同様に、彼も寝支度は終わっているのか紺色のサテンパジャマを着ている。

「何してるの?」

「ここで寝させていただこうかと…」

「はぁ…」

そう深いため息をつきながらソファに向かって一直線に歩いてきて、何をするかと思えば私をひょいと抱きかかえてしまうではないか。

「ちょっと、社長!」

「来ないなと思ったら、こんなところで寝ようとしてるんだもん。ほんと、目が離せないね」

これは、まさしく昨晩と同じ展開だ。いや、そうなってもらっては非常に困る。毎日あんなことされていては、まず私の体が持たない。彼の近くにいることが今は何よりも危険だと学んだはずではないか。

やはり昨日と同じように寝室のドアが開き、ベッドの上に優しく寝かせられる。

「スマホ、ここに置いとくね」

でもそこからは少し違って、ベッドの中に入って私を腕の中に閉じ込めて、今にも眠りにつこうという体勢に入っている。拍子抜けというのは自分でも認めたくないのだが、明らかに自分で想像していた展開とは異なるものになっている。

「おやすみ」

そう言いながら、眉下まで伸びた前髪に口づけをしたと思えば、ものの数秒で彼はピクリとも動かなくなる。私は彼を起こさないように少しだけ目線を上向きに動かすと、すでに夢の中にいるようだ。こうなると、また彼の腕の中で一晩を過ごさなければいけないというわけか…。

こんな近くに人がいても寝つけるなんて、彼はよっぽどこういうシチュエーションに慣れているのだろうか。私は今も自分の鼓動が響くくらいにうるさくて、全く寝れる気がしない。

この静寂をかき消すくらいに揺さぶられた昨日の夜。彼の大きな肉棒が私のまだ狭い入り口をじわじわと広げ、ゆっくりと探るように出入りを繰り返した。

そんな淫らな思考は永遠に止まってくれないから、せめて視界だけでも閉ざしてしまおうと彼の意識がないことをいいことに、そっとその胸を借りる。

不思議と昨日のような荒々しい呼吸や激しい鼓動は聞こえなくて、かすかに聞こえる寝息と、優しくなだめてくれた彼の手のリズムを思い出すような拍動が、心地よくも感じられる。

こんなに人の温もりを、肌でじっくりと感じられるのなんて何年ぶりだろう。彼の胸など借りなくても目の前が段々と暗くなっていき、気づいたときには私も自然と眠りに落ちていた。

「ピロロン、ピロロン」

出社時間に合わせて6時ちょうどに設定してあるアラーム音が、いつものように頭上で鳴り響く。

昨日はアラームより先に目が覚めてしまったが、今日はぐっすりと眠れたようだ。それは隣で寝ていた彼も同じのようで、昨晩の最後の記憶から体勢は一切変わっていない。

でも彼の腕に拘束されて体を動かすことができないから、アラームは鳴りっぱなしで、結局、彼もその音で起きてしまった。

「ん…?」

「すみません…起こしましたよね」

「アラーム?」

「今、消しますから」

「いや、僕がやる」

私が腕の中から抜け出そうすると、顔をグッと胸に深く埋められて、彼の片腕だけが一瞬背中から離れていく。そしてまた定位置に戻ると、夢の余韻に浸るように再び瞼を閉じる。

こうしてみると、彼の睫毛の長さがとてもよくわかる。あの夜は、これよりも近い距離で顔と顔を近づけていたはずだけれど、まじまじと見る余裕なんて私には1ミリも残されていなかった。

改めてしっかり観察すると、鼻の頭はツンと尖っていて、顔を近づければぶつかりそうになるくらいだ。だからあの夜も、うまく避けるように色んな角度から唇を落としてくれていたのだろうか。止めどなく触れ合っていたその唇は、私の体に残る感触通り、幅は小さくもぷっくりと弾力すらある。

顔を見るだけであの一夜が一瞬にして蘇ってくるなんて…どこかで切り替えなければ、このままズルズルとその気持ちに引っ張られてしまう。

「あの、社長…」

「んー?」

「お願いがあるんです」
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