この夜の意味〜声にできない恋を隠したら、完全無欠な御曹司の本気スイッチ入りました〜(旧:RISKY〜不敵な御曹司との恋は避けるべき〜)
「良いよ、言ってごらん」
「今まで通り、社長のそばで働かせてもらえませんか?」
先ほどまでのとろんとした眠そうな顔が嘘のように、彼の目はキリッと開く。
「急にどうして?」
「それは……私が私でなくなる気がするというか…」
「ダメなの?今までの君でなくなったら」
「え?」
「僕は、どんな君も受け止めたいんだけど」
どんな君も…何て安っぽい言葉だろう。私が誰の娘なのか、それを知っても彼は同じ言葉を言えるのだろうか。
「私が、嫌なんです…」
答えを考えているのか静かな間が生まれるが、その間もずっと頭を撫でる手は止まらないから、不思議と沈黙も長くは感じられない。
「んー、そう…じゃあ僕も頑張らないとね」
「…頑張る?」
「言ったでしょ。今の僕にとって、一番のリスクは君なんだって」
私だってこの3ヶ月、ずっとそばで観察してきたわけだから、彼がどんな人間なのか大体は把握しているつもりだ。
どんなときも気づけばパソコンを開いて何やら細かい数字と睨み合っていて、日を跨ぐまで会食が立て続けに入っているなんてことも、ざらにある。まさに仕事人間という言葉がぴったりだ。
家ではこんなに甘ったるい彼だけど、会社なら、いつも通りの社長に戻ってくれるはず。その方が、私も距離を取りながら好機をうかがえる。
「じゃあ私、先出ますね?」
私が彼の腕から出ようとしても、まるで離したくないと主張するみたいに、抱きしめる力を強めてくる。
「はぁ…僕の気も知らないで…」
「社長?」
「もう少しだけ……」
彼の腕の中があまりにも居心地が良くて、私はその言葉に言い返すこともできずに、大人しくしばらくこうしているしかなかった。
「おはようございます」
「おはよう」
私があの家で彼を最後に見たときは、上下サラサラとした紺色のパジャマを着ていて、起きてからそこまで時間も経っていなかったから、前髪もまだノーセットだった。
今、特別低い声で挨拶を返してきた社長は上下シワのない黒のスーツを着こなして、前髪もピシッと整髪剤で分けていて、やっぱりその姿とはまるで違う。
別人のようなのに、彼の足音が近づくだけで、全身には自然と力が入る。通りすがると、必ず頭の上にポンと優しく手のひらを乗せてくる彼の癖が、私の体にもすっかり染み付いてしまっているみたいだ。
でも今の彼は、まるで風のように私のそばを横切り、チェアの背もたれに体を預けても、その目がこちらを向くことはなく、ずっと目の前の画面だけを見つめている。
ああ、良かった。やっと従来の日常が戻ってきたみたいだ。私も安心していつものように、彼をリスクから守るために対策を練る。そうして何事もなく一日が過ぎ、村上くんが退社前の報告に訪れた。
「残りの予定は、森田様との会食のみですね」
「ああ、僕ももう少ししたら出るよ」
「社長?」
いつもなら村上くんは、ここで真っ先に帰路に着くはずなのに、なぜか今日はその後も言葉が続く。
「どうした?」
「何か、ありました?」
「今まで通り、社長のそばで働かせてもらえませんか?」
先ほどまでのとろんとした眠そうな顔が嘘のように、彼の目はキリッと開く。
「急にどうして?」
「それは……私が私でなくなる気がするというか…」
「ダメなの?今までの君でなくなったら」
「え?」
「僕は、どんな君も受け止めたいんだけど」
どんな君も…何て安っぽい言葉だろう。私が誰の娘なのか、それを知っても彼は同じ言葉を言えるのだろうか。
「私が、嫌なんです…」
答えを考えているのか静かな間が生まれるが、その間もずっと頭を撫でる手は止まらないから、不思議と沈黙も長くは感じられない。
「んー、そう…じゃあ僕も頑張らないとね」
「…頑張る?」
「言ったでしょ。今の僕にとって、一番のリスクは君なんだって」
私だってこの3ヶ月、ずっとそばで観察してきたわけだから、彼がどんな人間なのか大体は把握しているつもりだ。
どんなときも気づけばパソコンを開いて何やら細かい数字と睨み合っていて、日を跨ぐまで会食が立て続けに入っているなんてことも、ざらにある。まさに仕事人間という言葉がぴったりだ。
家ではこんなに甘ったるい彼だけど、会社なら、いつも通りの社長に戻ってくれるはず。その方が、私も距離を取りながら好機をうかがえる。
「じゃあ私、先出ますね?」
私が彼の腕から出ようとしても、まるで離したくないと主張するみたいに、抱きしめる力を強めてくる。
「はぁ…僕の気も知らないで…」
「社長?」
「もう少しだけ……」
彼の腕の中があまりにも居心地が良くて、私はその言葉に言い返すこともできずに、大人しくしばらくこうしているしかなかった。
「おはようございます」
「おはよう」
私があの家で彼を最後に見たときは、上下サラサラとした紺色のパジャマを着ていて、起きてからそこまで時間も経っていなかったから、前髪もまだノーセットだった。
今、特別低い声で挨拶を返してきた社長は上下シワのない黒のスーツを着こなして、前髪もピシッと整髪剤で分けていて、やっぱりその姿とはまるで違う。
別人のようなのに、彼の足音が近づくだけで、全身には自然と力が入る。通りすがると、必ず頭の上にポンと優しく手のひらを乗せてくる彼の癖が、私の体にもすっかり染み付いてしまっているみたいだ。
でも今の彼は、まるで風のように私のそばを横切り、チェアの背もたれに体を預けても、その目がこちらを向くことはなく、ずっと目の前の画面だけを見つめている。
ああ、良かった。やっと従来の日常が戻ってきたみたいだ。私も安心していつものように、彼をリスクから守るために対策を練る。そうして何事もなく一日が過ぎ、村上くんが退社前の報告に訪れた。
「残りの予定は、森田様との会食のみですね」
「ああ、僕ももう少ししたら出るよ」
「社長?」
いつもなら村上くんは、ここで真っ先に帰路に着くはずなのに、なぜか今日はその後も言葉が続く。
「どうした?」
「何か、ありました?」