この夜の意味〜声にできない恋を隠したら、完全無欠な御曹司の本気スイッチ入りました〜(旧:RISKY〜不敵な御曹司との恋は避けるべき〜)
シャワーで流せたら★
夕立の薄暗い空が広がり、一人きりの世界には悶々と淀んだ空気が立ち込める。ただでさえ苦しい息の吐き口を塞ぐほど、大粒の雨が容赦なく身体を叩きつけた。その痛みが全てを忘れさせてくれるなら、今はそれさえも厭わない。ずぶ濡れになりながら、ひたすら前に進み続けた。
一ヶ月前は何もかも、見るものすべてが初めての場所だったのに、今はどれだけ進んでも、見慣れた風景ばかりが続く。この気持ちからは、もう逃れたくても逃れられないのだと、出口のない絶望感に襲われた。
ずっと一人で走ってきたはずなのに。走ってこれたはずなのに。急に向かう先が分からなくなって、その場で崩れるようにうずくまる。そのとき、いかに彼の存在が大きなものになっていたのか、痛いほどに思い知った。
辛うじて連れてきた小さな端末は、押し潰してしまうほどに強く握りしめていないと、今にでも弱々しい指先から溢れ落ちそうだった。その端末がポンと光り、私の手元だけ明るさを取り戻す。
あれほど自分の中から消してしまいたかったはずなのに、このときばかりは、その明るさの向こうに彼の声を期待していた。
でも、そんな望みを一蹴するように、雨粒が叩きつけて滲んだ画面には、彼の名前など書かれてはいなかった。
「望月くん?週刊三報の今橋だけど」
「ご無沙汰しています」
「ああ。君、東条の周辺を探っていたよね」
「はい」
「それでね、今度、東条と北里の婚約会見があるそうなんだよ」
「婚約?いや、そんなはずは…」
私はずっと、自分の目で見たものしか信じてこなかった。一人で生きていくには、自分しか頼れるものがなかったから。
今も全身にはっきりと残る辿々しい指先、目覚めると頭上にある穏やかな寝顔。すべてが嘘だとは思えない。いや、思いたくなかった。
「驚くのはまだ早い。あまり大きな声では言えないんだがな。暴行、監禁、横領。東条太郎、相当のワルだぞ。1ヶ月前に匿名でリークが入って、警察が動き出したらしいが、どこまで追い込めるかは正直分からない。こっちも先手を打っときたいんだが、誰も手をつけたがらないんだよ」
こういう、まるで使い捨てるような誘い口は何度か聞いていたが、私は絶対に記事を書くことはなかった。まず、社会的に抹消できるような強力な情報が何もなかったから。今回の話はわけが違う。これらを突きつければ一発で東条太郎は終わるだろう。
でも婚約の件だけは、別問題だ。それだけは、私の目で確かめるまでは、どうしても信じることができない。私には何もないわけじゃない。この1ヶ月の記憶がうるさいくらいに鮮明に残っているから。
「どうだ。やっぱりうちで一本書いてみる気はないか?」
「少し、考えさせてください」
「そうか。じゃあ明日までに、答えを出してくれ」
そう言って答えを先延ばしにするが、もうこの時点で向かう方向は決まっていた。復讐という使命が私に課されている限り、もうこれ以上彼のそばにはいられない。
一ヶ月前は何もかも、見るものすべてが初めての場所だったのに、今はどれだけ進んでも、見慣れた風景ばかりが続く。この気持ちからは、もう逃れたくても逃れられないのだと、出口のない絶望感に襲われた。
ずっと一人で走ってきたはずなのに。走ってこれたはずなのに。急に向かう先が分からなくなって、その場で崩れるようにうずくまる。そのとき、いかに彼の存在が大きなものになっていたのか、痛いほどに思い知った。
辛うじて連れてきた小さな端末は、押し潰してしまうほどに強く握りしめていないと、今にでも弱々しい指先から溢れ落ちそうだった。その端末がポンと光り、私の手元だけ明るさを取り戻す。
あれほど自分の中から消してしまいたかったはずなのに、このときばかりは、その明るさの向こうに彼の声を期待していた。
でも、そんな望みを一蹴するように、雨粒が叩きつけて滲んだ画面には、彼の名前など書かれてはいなかった。
「望月くん?週刊三報の今橋だけど」
「ご無沙汰しています」
「ああ。君、東条の周辺を探っていたよね」
「はい」
「それでね、今度、東条と北里の婚約会見があるそうなんだよ」
「婚約?いや、そんなはずは…」
私はずっと、自分の目で見たものしか信じてこなかった。一人で生きていくには、自分しか頼れるものがなかったから。
今も全身にはっきりと残る辿々しい指先、目覚めると頭上にある穏やかな寝顔。すべてが嘘だとは思えない。いや、思いたくなかった。
「驚くのはまだ早い。あまり大きな声では言えないんだがな。暴行、監禁、横領。東条太郎、相当のワルだぞ。1ヶ月前に匿名でリークが入って、警察が動き出したらしいが、どこまで追い込めるかは正直分からない。こっちも先手を打っときたいんだが、誰も手をつけたがらないんだよ」
こういう、まるで使い捨てるような誘い口は何度か聞いていたが、私は絶対に記事を書くことはなかった。まず、社会的に抹消できるような強力な情報が何もなかったから。今回の話はわけが違う。これらを突きつければ一発で東条太郎は終わるだろう。
でも婚約の件だけは、別問題だ。それだけは、私の目で確かめるまでは、どうしても信じることができない。私には何もないわけじゃない。この1ヶ月の記憶がうるさいくらいに鮮明に残っているから。
「どうだ。やっぱりうちで一本書いてみる気はないか?」
「少し、考えさせてください」
「そうか。じゃあ明日までに、答えを出してくれ」
そう言って答えを先延ばしにするが、もうこの時点で向かう方向は決まっていた。復讐という使命が私に課されている限り、もうこれ以上彼のそばにはいられない。