リシェル・ベッカーが消えた日〜破滅と後悔はすぐそこに〜
バネッサは後ろに控えていた文官に、とある用紙をフランクの前に広げさせる。なにかのリストのようで、見覚えのある商会がずらりと並んでいた。
「ご存じの通り、このリストはソクラ草を使った商品を取り扱っている商会よ。そのうちの七割が、あなたと取引がありますね」
「ああ、確かに贔屓にしているものばかりだが……ソクラ草なんて今どき、どこでも売りさばかれているものだろう」
姪が幼いながらに発見したソクラ草は、今ではハウス栽培にてある程度採取できるようになった。薬にすればどんな傷も癒やす万能薬だが、貴重が故に国は他国への流出に制限をかけている。
しかし近年、悪質な行商人によってソクラ草を大量に買い込む動きが見られ、バネッサを中心とした文官が調査を行っていた。その中でソクラ草の商品を取り扱っている商会をリストアップし、調査を重ねた結果、フランク・ベッカーの名前が挙がったのだ。
「あなたの商談相手は皆、闇商会と取引のある行商人ばかり。どうやって資金を調達しているかずっと不思議に思っていたのだけれど……まさか、リシェル嬢の手柄を悪用するなんてね」
「なっ……だ、旦那様! それは本当ですか!?」
後ろで静かに聞いていた執事が取り乱す。エミリも思わず口元を抑えた。なんせ、あんなに嫌っていた姪の実績を都合よく利用していたのだから。
「何のことだ? 確かにベッカー家所有の農園で栽培したソクラ草は交渉の品として使用しているが、国が定めた規定量は守っている。これは違反ではないはずだ」
「ええ。確かに規定量を厳守しているのは調査でわかっているわ。……でも、密輸の話は別よ」
そう言ってバネッサは小さなボックスを取り出して魔力を注ぐ。すると、ボックスから壁に向かって光が放出され、とある映像が流れ始めた。
そこには、木箱いっぱいに詰め込んだソクラ草の側に立って行商人と硬い握手を交わし、なにかの袋を受け取るフランクの姿があった。
「これは……っ!?」
「このボックスは放映機と呼ばれる魔道具。録画したものを壁に映し出す、あなたの嫌いな隣国の技術よ」
「で、デタラメだ! こんなもの、いくらだって捏造が……」
「これは三年前にあるリークによって調査が始まり、今日に至るまであなたが交渉に出かけた際に録画していたもの。……ところで、この映像が撮れたということは、密会をリークしてくれた人物が身近にいるということなのだけれど……わかるかしら?」
バネッサの問いかけに、フランクの脳裏にはある人物が思い浮かぶ。次第に顔が青白くなると、変わってバネッサが答えた。
「あなたが姪と家名を利用して交渉してきた違法な密輸を、『アルカディアの才媛』と呼ばれたあの子が見逃すと、本当に思っていたの?」
「ご存じの通り、このリストはソクラ草を使った商品を取り扱っている商会よ。そのうちの七割が、あなたと取引がありますね」
「ああ、確かに贔屓にしているものばかりだが……ソクラ草なんて今どき、どこでも売りさばかれているものだろう」
姪が幼いながらに発見したソクラ草は、今ではハウス栽培にてある程度採取できるようになった。薬にすればどんな傷も癒やす万能薬だが、貴重が故に国は他国への流出に制限をかけている。
しかし近年、悪質な行商人によってソクラ草を大量に買い込む動きが見られ、バネッサを中心とした文官が調査を行っていた。その中でソクラ草の商品を取り扱っている商会をリストアップし、調査を重ねた結果、フランク・ベッカーの名前が挙がったのだ。
「あなたの商談相手は皆、闇商会と取引のある行商人ばかり。どうやって資金を調達しているかずっと不思議に思っていたのだけれど……まさか、リシェル嬢の手柄を悪用するなんてね」
「なっ……だ、旦那様! それは本当ですか!?」
後ろで静かに聞いていた執事が取り乱す。エミリも思わず口元を抑えた。なんせ、あんなに嫌っていた姪の実績を都合よく利用していたのだから。
「何のことだ? 確かにベッカー家所有の農園で栽培したソクラ草は交渉の品として使用しているが、国が定めた規定量は守っている。これは違反ではないはずだ」
「ええ。確かに規定量を厳守しているのは調査でわかっているわ。……でも、密輸の話は別よ」
そう言ってバネッサは小さなボックスを取り出して魔力を注ぐ。すると、ボックスから壁に向かって光が放出され、とある映像が流れ始めた。
そこには、木箱いっぱいに詰め込んだソクラ草の側に立って行商人と硬い握手を交わし、なにかの袋を受け取るフランクの姿があった。
「これは……っ!?」
「このボックスは放映機と呼ばれる魔道具。録画したものを壁に映し出す、あなたの嫌いな隣国の技術よ」
「で、デタラメだ! こんなもの、いくらだって捏造が……」
「これは三年前にあるリークによって調査が始まり、今日に至るまであなたが交渉に出かけた際に録画していたもの。……ところで、この映像が撮れたということは、密会をリークしてくれた人物が身近にいるということなのだけれど……わかるかしら?」
バネッサの問いかけに、フランクの脳裏にはある人物が思い浮かぶ。次第に顔が青白くなると、変わってバネッサが答えた。
「あなたが姪と家名を利用して交渉してきた違法な密輸を、『アルカディアの才媛』と呼ばれたあの子が見逃すと、本当に思っていたの?」