奪われる人生なら、 すべて捨ててしまいましょう ~忘れ去られた第七王女による国を巻き込んだ逆転劇~
 皇帝は石から伸びる鎖のような魔力で、ディーデリックの剣を受け止めていた。響く、金属同士のぶつかる音。

「未来は、奪われていいものじゃない。皇帝は民を導く者であり、民の未来を奪う者ではないだろう!」
「未来だと? 未来は力ある者が築くものだ。ならば――不滅の我こそが未来を司る皇帝だ!」

 皇帝の魔力がさらに膨れ上がり、石からまばゆいほどの光となってあふれ出す。
 目の前で、黒い渦が広がっていく。魂の移植石に取り込まれた人達の嘆く声が、聞こえてくるようだった。

(また、あの時と同じ……!)

 一度目の人生、胸を貫かれたあの瞬間。
 冷たい暗闇に閉じ込められ、ただ夫の笑い声だけを聞かされ続けた絶望――それと同じ光景が、いまこの場で繰り返されようとしている。

「誰一人、私から逃れられはせぬ!」

 皇帝の声が、雷のように響く。

(どうにかしなくては……)

 エリュシアは魔道具師だ。魔道具師には、魔道具師の戦い方がある。
 エリュシアは、持参してきた魔道具を起動した。
 これは、一度しか使えない使い切りの魔道具。素材の調達が難しく、一個しか作れなかった。
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