恋を知らない侯爵令嬢は裏切りの婚約者と婚約解消し、辺境地セカンドライフで溺愛される
 優しくお腹を撫でていた手が、今度は私を引き寄せて抱きしめた。
 急にどうしたのだろう。これって、絶対、なにかあったのよね。

 さっきまでレスターさんと話していたのだから、枯れた遺跡がらみの話しかカーラのことよね。
 今朝もカーラは元気な顔をしていたわ。それにお腹を触らせてもらったけど、とんとんって蹴るような振動があったから、問題はないと思う。

「遺跡でなにかあったの?」

 尋ねてみても、アルフレッドは「ご心配には及びません」としかいわなかった。だけど、優しい手が私の髪を撫で続けた。
 厚みのある胸に頬を寄せ、服の向こうからでも伝わる確かな律動に耳を傾ける。いつもと変わらない優しい指と触れ合いなのに、どうしてか、アルフレッドがなにか迷っているような気がした。

 もしかして、私を守ろうとすることが枷になっているのかしら。

「……私、いったわよね。少しは頼って欲しいって」

 髪を撫でていた指が止まる。そっと顔を上げると、眉間にしわを寄せたアルフレッドが私をじっと見つめていた。

「私は戦えないけど、アルフレッドの邪魔をするために来たんじゃないわ」
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