恋を知らない侯爵令嬢は裏切りの婚約者と婚約解消し、辺境地セカンドライフで溺愛される
 悲痛な叫びとともに魔力の風が巻き上がり、フェリクスを中心にして渦巻いた。それは、ここに辿り着いた時に感じた嫌悪感と全く同じだ。なんて虚しくて昏い魔力だろう。

「……落ち着いて、フェリクス! 話し合いましょう」
「だから私は、君に会いに来たんだよ」

 女性を抱きしめながら告げたフェリクスは、くつくつと喉を引きつらせながら笑う。

「どうして癒し手だと隠していたんだ」
「隠していないわ。貴方には話していたじゃない」
「聞いていない! 君は、私を笑っていたのか。ダイアナに騙されて落ちぶれる私を……真実の愛などないと、笑っていたのだろう!?」
「そんなことないわ。落ち着いて、フェリクス」
「……ここに来るまで、君が憎くて仕方なかった。どうして私を置いて、別の男に嫁ぐのか……それも、従者だった男が辺境伯になるなど」

 ぶつぶつと呟きの途中で、何度も引きつった笑い声が零れる。どう見ても正常じゃないわ。
 どう話をしたらいいんだろう。
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