恋を知らない侯爵令嬢は裏切りの婚約者と婚約解消し、辺境地セカンドライフで溺愛される
 アデルノアから屋敷に戻ると、ヴァネッサ様が少し涙を浮かべて出迎えてくれた。それに、カーラやメイドたちも。

「ただいま戻りました」
「二人とも無事に帰ってきてなによりです。リリー、どこか怪我をしたのですか?」
「いいえ、怪我はしていません。ただ少し疲れて、その……」

 アルフレッドの腕に抱き上げられて帰ってきた私を見て、ヴァネッサ様は心配そうに駆け寄ってくれた。

「なにがあったのか聞く前に、少し、休んだ方がよさそうですね。大変でしたね」

 私の髪を撫でて微笑むヴァネッサ様は、小さく「まあ」と呟いた。そうして、少し頬を緩ませると「リボンが緩んでいますよ」といって、ドレスの首元を整えてくれた。

 満足そうに微笑む顔を前にして、背筋を一筋の汗が伝い落ちる。もしかしたら、首元にあったキスの痕が見えていたのかしら。
 恥ずかしさがこみ上げ、耳まで熱くなっていく。きっと今の私は、顔が真っ赤だわ。

「アルフレッド、リリーに無茶をさせてはいけませんよ」
「……はい」
「リリー、元気になったら産着の縫い方を教えましょうね。カーラと一緒に縫うといいわ」
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