恋を知らない侯爵令嬢は裏切りの婚約者と婚約解消し、辺境地セカンドライフで溺愛される
 もしも、リリーステラ様の婚約が破棄される未来を知っていたなら、私もあの日、祖母の養子になることを決めはしなかっただろう。

「……リリーステラ様をお慕いしているからこそ、あの日、私は祖母と約束を交わしたのです」
「どういうことだ?」
「養子の話しは弟へきたものでした。私は……リリーステラ様から逃げ出すため、私を養子にして欲しいと自ら願い出たのです」

 八年前、リリーステラ様の婚約が決まった日のことを思い出すと、今でも苦しさを覚える。

 私以外の男性を見て微笑むお姿を前にし、嫉妬に狂いそうだった。それを押さえ込み、リリーステラ様の笑顔を見つめ、抱いた思いを打ち明けることもできないのだと思い知らされ、静かに拳を握った。

 あの日と同じように、指先を握り込んだ。

「自分を戒め、この気持ちを忘れるため、当時そうすることが最良と考えたのです」

 だけど、すぐには離れがたかった。
 リリーステラ様が学園を卒業するまで、その身を守るのは私の役目だと言い訳をし、傍にい続けた。

 手袋に覆われた指を握りしめ、深く息を吸い込む。深いところまで酸素を送り込めば、胸の痛みがわずかに和らぐような気がした。
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