恋を知らない侯爵令嬢は裏切りの婚約者と婚約解消し、辺境地セカンドライフで溺愛される
 アルフレッドは我が家の家令であるバークレー子爵の長男で、幼い頃から一緒に育ってきた。五つ年上だから兄のような存在でもあるけど、彼から見れば、私は主も同じだろう。

 私を支えてくれるアルフレッドの前に立つ令嬢としても、恥ずかしくないように背筋を伸ばして生きてきたのに。
 よりによって、こんな情けない姿をさらすなんて。

 主としては示しがつかないわ。一人で泣いてる顔なんて見られたくなかった。

 なのに、拭ったばかりの頬を再び涙が伝い落ちた。

「どこか、痛むのですか?」

 服が汚れるのも構わず、私の前に跪いたアルフレッドは「失礼します」といって、私の手を取った。

 白い手袋に覆われた指先が、優しく気遣いながら触れてくる。その温かさに、涙がさらにあふれた。

 私、婚約者を奪われたの。愛されなかったの。
 魅力がないのかしら。

 毎晩お手入れも欠かさなかった自慢の赤毛だけど、フェリクス様は、金の髪の方がお好きだったのかもしれないわ。

 お父様に似たアメジスト色の瞳は、冷たく見えるのかしら。青空のような明るい瞳だったら、フェリクス様は私を見つめて下さったの?
< 4 / 194 >

この作品をシェア

pagetop