恋を知らない侯爵令嬢は裏切りの婚約者と婚約解消し、辺境地セカンドライフで溺愛される
「失礼します、お嬢様」
「……え?」
 
 突然、地面が遠ざかった。
 気付けば、私はアルフレッドの(たくま)しい腕に抱え上げられていた。

「こうすれば、皆様にお顔を見られることもないでしょう。居心地が悪いとは思いますが、馬車までご辛抱下さい」
 
 優しい声音に、涙はさらに止まらなくなる。

 アルフレッドの胸を濡らしながら、私は小さく頷き、嗚咽を堪えて「ありがとう」と呟いた。
 
 大きな手に包まれるのが、こんなに安心するなんて。
 散り散りになっていた私の心は、すぐ側に感じるアルフレッドの優しさと鼓動によって、どうにか繋ぎ止められた。

 それでも、悲しいことに変わりはなく、涙は流れ続けた。
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