妹ばかり見ている婚約者はもういりません
「それはルドヴィク様がお金持ちの伯爵家の跡取りだったからですわ。それなのに、伯爵家の後継はルドヴィク様の弟になって、私はルドヴィク様とこの小さな子爵家を継がなければならないなんて……! 別の人と結婚したいと言ったら外聞が悪いからだめだとお父様もお母様も聞いてくれないし! みんなしてなんなんですの!」

「そんなこと私に言われても……」

 随分と勝手な言い分に困惑するしかなかった。

 呻くように文句を言っていたフェリーチェは、キッとこちらを見据えて言う。

「せめてお姉様、ラウロ・ヴァレーリをやめてもっとぱっとしない男と婚約してくださいまし! そっちの方がお姉様にお似合いですわ。お姉様に勝てさえすれば、私の気分も大分ましになりますの!」

「なんなの、それは……」

 フェリーチェの勝手な主張に呆気に取られていると、ラウロ様が私の前に出て言った。


「フェリーチェ嬢。悪いがジュスティーナ嬢をほかの男に渡す気はないんだ。君も姉のことばかり意識していないで、ルドヴィク殿とうまくやっていけるよう考えたらどうだ?」

「無理ですわ! 私、もうルドヴィク様のことなんて全然好きじゃありませんもの」

「だとしても、姉との仲を引き裂いてまでルドヴィク殿に近づいたのは君自身だろう? ローレ家を継げるのならいいじゃないか。二人で関係を再構築すればいい」

 ラウロ様がそう言うと、フェリーチェの顔がどんどん歪んでくる。

「あなたに指図なんてされたくありませんわ……! ああもう、どうして私がこんな目に……。私は玉の輿に乗って、お姉様の上に立つはずだったのにぃ……!」

 フェリーチェは悔しげな声で言う。


「お姉様、あまり調子に乗らないでくださいね! 第三王子なんてきっと女がたくさん寄ってくるでしょうから、お姉様ではきっとすぐに飽きられますわ!」

「いや、俺はこの先もジュスティーナ嬢以外の女性を見るつもりはない」

 フェリーチェの捨て台詞に、ラウロ様は間髪入れずに言葉を返す。

 フェリーチェは憎々しげにラウロ様を睨むと、ずんずん歩いて行ってしまった。


「妹が申し訳ありません……」

 私が恐縮して謝ると、ラウロ様は笑顔で首を横に振ってくれた。

「いや、いいよ。しかし随分主張の激しい妹さんだな」

「お恥ずかしい限りです……」

 両親には媚びるような目で見られ、フェリーチェには文句を付けられ、いいかげん呆れられているんじゃないかといたたまれなくなる。

 しかしラウロ様の表情に呆れは見えず、ただ柔らかな笑みをこちらに向けてくれた。


「そろそろ行こうか、ジュスティーナ嬢」

 ラウロ様はそう言って手を差し伸べてくれた。

 私はこくりとうなずいてその手を取った。
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