座敷牢令嬢は今日も謎を解く
「キヨ様、お久しぶりです」
数日ぶりにやってきた田中が格子戸の前でうやうやしく頭を下げる。
田中がここへやってきたのは、ひまわりを持ってきたとき以来だ。
そのひまわりは今でも部屋の隅に置いてある。

「どうやらわたくしのことを知ったようですね」
座敷牢に入ってきた田中がキヨの前に正座して言った。
「えぇ。聞いたわ。あなたは昔大旦那さまに仕えていた。そして井戸に落ちて死んでしまった。原因は、足を滑らせたから」

キヨからの説明を田中は無言で聞いていた。
足を滑らせたと言っても反応は見られなかった。
「キヨ様が知ってしまった通り、わたくしはもう死んでいます」
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