忘却の蝶は夜に恋う
◇
皇城へと出仕するノクスを見送った後、イスカはセバスチャンと一緒に朝食の後片付けをしていた。真っ黒く焦げたパンはセバスチャンの手によりラスクのような菓子へと生まれ変わり、萎びたサラダは夕食のスープの具に加わった。その様を真横で見ていたイスカは、セバスチャンに賞賛の拍手を送った。
「素晴らしいね。私の失敗がなかったかのように綺麗になった」
「お褒めに預かり光栄にございます」
セバスチャンは「ほほほ」と陽気に笑いながら、拭き終えた食器を棚に仕舞ったり、使いかけの食材を貯蔵庫へ入れたりと、老人とは思えない動きで片付けていった。
この後は邸内の掃除をするのか、掃除用具入れから箒とモップ、大きなバケツを取り出すと、庭先にある井戸から水を汲み上げ始めた。
「私にも何か手伝わせてもらえないだろうか」
そうイスカが声を掛けると、セバスチャンは何度か瞬きをしてから、ふっと顔を綻ばせた。
「では、ノクス様にお届け物をして頂けますかな?」
「忘れ物かい?」
「私が渡し忘れてしまったのです」
セバスチャンは掃除用具をその場に置いて手を洗うと、イスカを連れて厨房へと戻っていく。いつの間に用意していたのか、調理台の隣にある台の上にはバスケットが置かれていた。
「こちらはノクス様の昼食でございます。無理矢理にでも持たせないと、ろくに食べずに働かれてしまうのですよ」
「それは大変だ。よし、私が行ってこよう」
イスカが意気込むように腕捲りしたのを見て、セバスチャンは嬉しそうに笑った。
皇城へと出仕するノクスを見送った後、イスカはセバスチャンと一緒に朝食の後片付けをしていた。真っ黒く焦げたパンはセバスチャンの手によりラスクのような菓子へと生まれ変わり、萎びたサラダは夕食のスープの具に加わった。その様を真横で見ていたイスカは、セバスチャンに賞賛の拍手を送った。
「素晴らしいね。私の失敗がなかったかのように綺麗になった」
「お褒めに預かり光栄にございます」
セバスチャンは「ほほほ」と陽気に笑いながら、拭き終えた食器を棚に仕舞ったり、使いかけの食材を貯蔵庫へ入れたりと、老人とは思えない動きで片付けていった。
この後は邸内の掃除をするのか、掃除用具入れから箒とモップ、大きなバケツを取り出すと、庭先にある井戸から水を汲み上げ始めた。
「私にも何か手伝わせてもらえないだろうか」
そうイスカが声を掛けると、セバスチャンは何度か瞬きをしてから、ふっと顔を綻ばせた。
「では、ノクス様にお届け物をして頂けますかな?」
「忘れ物かい?」
「私が渡し忘れてしまったのです」
セバスチャンは掃除用具をその場に置いて手を洗うと、イスカを連れて厨房へと戻っていく。いつの間に用意していたのか、調理台の隣にある台の上にはバスケットが置かれていた。
「こちらはノクス様の昼食でございます。無理矢理にでも持たせないと、ろくに食べずに働かれてしまうのですよ」
「それは大変だ。よし、私が行ってこよう」
イスカが意気込むように腕捲りしたのを見て、セバスチャンは嬉しそうに笑った。