忘却の蝶は夜に恋う
◆
一体、この無駄な時間はいつまで続くのだろうか。
「ノクス・プルヴィア。一体どのような手を使って、その地位を手に入れたんだ?」
怒気を含んだ声でそう問いかけてきたのは、魔術師団に所属するセドリック・オールヴェニスだ。名門公爵家の次男であり、容姿端麗・文武両道ともなると、嫌でも耳に入ってくる存在だ。
ノクスは文官であり、セドリックは軍官。これまで書類関係でやり取りをすることは何度かあったが、顔を合わせたことは一度もなかったというのに。
所用で執務室の外に出ていたその帰り道で、ノクスは不運なことにセドリックに絡まれてしまっていた。
「それをお答えする義務はありません。私が今の立場にある理由でしたら、昨年の国仕試験の詳細を知る者に問われるのが宜しいかと」
ノクスは自分よりも頭ひとつ分背が高いセドリックを見据えながら、淡々とした声音で返した。
柱の間を吹き抜ける風が、セドリックの紫色の髪を揺らす。そのスペックの高さから絶大な人気があり、優雅で物腰柔らかく、誰にでも分け隔てなく優しく接するので、周囲からの信望も厚いと聞くが──。
「図に乗るな。平民風情が」
セドリックの唇が弧を描いたのと、ノクスの首元のタイが引っ張り上げられたのは同時だった。反射的にセドリックの手首を掴んでしまったが、剣を握ったことすらないノクスにそれ以上のことはできなかった。
一体、この無駄な時間はいつまで続くのだろうか。
「ノクス・プルヴィア。一体どのような手を使って、その地位を手に入れたんだ?」
怒気を含んだ声でそう問いかけてきたのは、魔術師団に所属するセドリック・オールヴェニスだ。名門公爵家の次男であり、容姿端麗・文武両道ともなると、嫌でも耳に入ってくる存在だ。
ノクスは文官であり、セドリックは軍官。これまで書類関係でやり取りをすることは何度かあったが、顔を合わせたことは一度もなかったというのに。
所用で執務室の外に出ていたその帰り道で、ノクスは不運なことにセドリックに絡まれてしまっていた。
「それをお答えする義務はありません。私が今の立場にある理由でしたら、昨年の国仕試験の詳細を知る者に問われるのが宜しいかと」
ノクスは自分よりも頭ひとつ分背が高いセドリックを見据えながら、淡々とした声音で返した。
柱の間を吹き抜ける風が、セドリックの紫色の髪を揺らす。そのスペックの高さから絶大な人気があり、優雅で物腰柔らかく、誰にでも分け隔てなく優しく接するので、周囲からの信望も厚いと聞くが──。
「図に乗るな。平民風情が」
セドリックの唇が弧を描いたのと、ノクスの首元のタイが引っ張り上げられたのは同時だった。反射的にセドリックの手首を掴んでしまったが、剣を握ったことすらないノクスにそれ以上のことはできなかった。