絶対零度の王子殿下は、訳アリ男装令嬢を愛して離さない
 飛んでいったのでもなく、消えてしまった。溶けたようにも見えたけれど、一瞬過ぎてわからない。
 セレナは今のような現象を一度だけ見たことがある。
 魔法で物体を具現化する授業だ。
 物体がその身に宿している魔力を失ったとき、今と同じようにシュッと跡形もなく消滅してしまう。
 そう、さっきクラスメイトたちが話していたホークアイに使う鳥のような……。

(じゃぁ……今のは……)

 誰かの魔法で作られた鳥で間違いないだろう。
 もしかしたら、監視用に先生たちが飛ばしているのかもしれない。

「あれ……、痛みが……」

 足首がほんのり温かいことに気付き、恐る恐る動かしてみると、完全ではないもののさっきまでの激しい痛みは幾分和らいでいた。

(小鳥さんが治癒魔法で治してくれて、魔力がなくなったから消えたのかな)

 ゆっくりと立ち上がり、制服の泥汚れを手で払う。左足は体重が乗ると鈍い痛みを感じるけれど、とりあえず歩く分には問題なさそうだった。

(よかった、歩けそう。小鳥さんありがとう)

 消えてしまった美しい小鳥に心の中で礼を言い、気を取り直して顔をあげた。

「さてと、薬草探さないと……。――って……イシャイラズ!」

 なんと、すぐ目の前にずっと探していた薬草が生えていた。多肉植物のそれは、株をいくつにも増やして立派に自生しているが、一段低いここは来た道からは死角になっていて見えない位置だった。

「これは見つからないわけだ……」

 セレナはイシャイラズの葉を一枚もぎ取って、みんなとの合流場所へと急いだ。


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