絶対零度の王子殿下は、訳アリ男装令嬢を愛して離さない
 無事に合流したセレナは、イシャイラズを見つけたことを報告して森の出口へと向かう。
 しかし、治まったはずの足首の痛みが少しずつぶり返し、その痛みに耐えながらみんなの後についていく。
 みんなには、余計な心配をかけてはいけないと思って、怪我をしたことは伝えていない。それに今ここで怪我を訴えれば、みんなに迷惑がかかってしまう。それだけは避けたかった。
 だけど、足が地に着くたび、脈を打つたびにずっきんずっきんと痛みがセレナを襲う。強まるばかりの痛みに次第に脂汗が滲みだした。ほぼ半日森の中を歩き回っていたため、みんなも口数が少なく、誰もセレナの異変に気付かないのが幸いだった。

(早く帰って医務室行きたい……)

「ねぇ、あれって……」
「殿下だよな……」

 マルセルとイザックの声に、セレナは顔を上げる。すると、確かに前方にアンリの姿が見えた。しかも走っているではないか。

「しかも一人?」
「だな」
「なんかあったのかな」

 一同が首をかしげつつ、こちらへ向かってくるアンリを見ていた。

「殿下、どうかされたんで」
「――足は大丈夫か」

 マルセルの呼びかけにもみんなにも目もくれず最後尾にいるセレナの前まで来たアンリは、そう言ってセレナの両腕を掴んだ。まるで体を支えるように優しく。大きな手に包まれて、強張っていた体と心が安心して力から力が抜けるのがわかった。

「どうして……」

 どうして、誰にも言っていない足のことをアンリが知っているのか。
 その思考の先につながる答えは一つしかなくて、セレナは「やっぱり」と内心で思った。

(知られたくなかったな……)

 そう思う一方で、アンリの顔を見てほっとしている自分もいて、胸中はすごく複雑だった。

「えっ、足って、カイルくん、怪我したのかい?」
「えっと……」

 驚いた顔のマルセルが横からこちらを覗き込んできて、気まずくなったセレナは思わず俯いてしまう。

「えっと……その、えっ、わっ、ええっ⁉」

 なんて言おうか考えていたら、突然体がふわっと浮いた。
 アンリがセレナのひざ下に腕を回し、軽々と抱き上げられてしまった。

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