絶対零度の王子殿下は、訳アリ男装令嬢を愛して離さない
「そうかぁ。でも、もしそうだったらカイルのそばにはいないでしょ」
「殿下はきっと、責任を感じているんだ」
「責任? なんの?」
「僕のそばにいるって……守るって言った責任」
「いや、そんなばかな」と、一笑に付されてしまうが、セレナは首を横に振ってそれを否定する。真剣なセレナの顔を見て、ギャスパーの笑みは消えた。

「そっか……、一度殿下と話してみたら? なにか誤解があるかもしれないし」

 諭すように言われて頷いたセレナだったが、そんなことできるわけがないと内心では諦めていた。
 相手は王子殿下なのだ。

(どうして急に距離を取るようになったのかなんて、聞けないよ……)


 アンリのセレナに対する態度は日を増すごとにあからさまなものになっていく。セレナがなにかを話しかけても必要最低限の返事しかもらえず、会話が発展するどころか一言で終わってしまう。そんな日が続いたせいで、セレナは話しかけることも躊躇うようになり、二人の間には重苦しい空気が流れていた。

 なのに、アンリはセレナのそばから離れようとしない。

 それがなぜなのか、セレナには確かめる勇気はなく、時間だけが過ぎていく。

(お腹が痛い……)

 数日前から胃の辺りがキリキリと痛みだした。食事も喉を通らない。
 選択授業中に医務室で見てもらったら「ストレス性の胃炎だろう」と胃薬を処方された。魔法で痛みを取ることは可能だけど、それは一時的でしかなく根本的解決にはならないから治療は施さないとのこと。

「今日は休んだら?」

 付き添ってくれたギャスパーが心配そうに声をかけるも、セレナは「大丈夫」と意地でも休もうとはしない。

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