絶対零度の王子殿下は、訳アリ男装令嬢を愛して離さない
 昨夜、ずっとそばにいてくれたアンリを、放っておいてくれと冷たい言葉で拒絶した。
 もう、あの優しい眼差しを向けられることも、魔法について話すことも、一緒に笑いあうことも、もう二度とできないのだ。

(自分から手放したくせに……)

 とてつもない喪失感に、胸が締め付けられる。自分に泣く資格はないと、込み上げてくる涙を必死に抑え込んだ。

「そのことなんだけど……、二人ともそんなに気にかけてくれなくて大丈夫だよ」

 いい加減自立しなくてはと思っていたセレナは、ちょうどいい機会かもしれないと二人に考えていたことを切り出す。

「でも……」
「最近クラスの人とも仲良くなってきたし、一人で行動するようなことはしないから安心して。――あっ、マルセル! 僕も一緒に教室行っていいかな?」

 ちょうど食堂を出るところだったマルセルが目に入ったため声をかけると、マルセルは二つ返事で了承してくれた。

「じゃぁ、先に行ってるね」

 まだなにか言いたげな視線を投げてくる二人を置いて、セレナはマルセルの元に駆け寄った。

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