絶対零度の王子殿下は、訳アリ男装令嬢を愛して離さない
「ありがとうございます……殿下、ごめん……なさい……僕……」

(私は、なんて酷いことを言ってしまったんだろう)

「謝るのは俺の方だ」
「殿下はなにも悪くありません、悪いのは全部僕です! 優しい殿下に……、放っておいてくれだなんて、僕はなんて自分勝手で酷いことを……、ごめんなさい……」
「謝らなくていい。迷惑だと気付かなかった俺が悪いんだ。君に嫌われて当然だと思う」
「違います! 僕が放っておいてと言ったのは、ただ殿下にこれ以上迷惑をかけたくなかっただけで……、迷惑だとか殿下を嫌いになるだなんて、そんなこと、ありえな……んです」

 ただただ、周りに守ってもらっているだけの自分が情けなかった。

 嗚咽で上手く話せないセレナをなだめるように、アンリは肩をさすった。ゆっくりでいいからと言われている気がして、セレナは呼吸を整える。どこまでも優しいアンリに、どうしようもないほどの喜びと罪悪感が溢れてセレナの中を埋め尽くした。

「どうして……、どうしてそこまでしてくださるのですか? 僕を守ると言ってしまった手前、義務を感じているのならそんなの気にしなくていいんですよ」
「俺だって迷惑だなんて思ったことは一度もないし、義務感で君のそばにいたんじゃない。……好きな相手のそばにいたいと、優しくしたいと思うのは当たり前だろう」
「す、き……?」

 思いがけない言葉が出てきて、思わず聞き返していた。
 物凄い間抜け面を晒してしまったと思う。
 それでもアンリは顔色一つ変えずに「そうだ」と澱みなく言い放った。

「あ……、それは友」
「友人としてではない」
「えっと……で、殿下、僕は……」

 男ですよ、と言おうとしたセレナよりも早くアンリが口を開く。

「――セレナ」
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