絶対零度の王子殿下は、訳アリ男装令嬢を愛して離さない
「痛い……、痛いよ……お兄さま……、ごめ……なさ……」
ベッドの上、セレナはシーツに包まった体を縮こませ、何度も「ごめんなさい」と苦しそうにうなされていた。そのあまりにも痛ましい姿に、心臓が締め上げられる。
「ごめんなさ……おに……さま……痛い……、苦しい……」
きつく閉じられた瞼の端からはぽたぽたと涙が伝い、色が変わるほど食いしばった唇は苦し気に歪んでいた。アンリはベッドの傍らに膝をついて、セレナの体に手をかざして治癒魔法をかける。今の自分には、彼女の体の痛みしか取り除くことしかできないのが心底悔しかった。
「大丈夫だ」
この声が彼女に届くとは思わなかったけれど、言わずにはいられない。
「もう大丈夫だ」
もう、苦しまなくていいと、少しでも彼女の背負う荷を軽くしてやりたい。兄の死を背負い、自分を殺して生きる彼女の心の苦しみを癒したいと強く思った。