絶対零度の王子殿下は、訳アリ男装令嬢を愛して離さない
「結婚相手は自分で選びたい、と思っています」
「まぁっ!」
「おぉっ」
感嘆の声をあげた二人は互いに顔を見合わせて目を見開いた。
「あなた! 聞きまして⁉ アンリが! あのアンリが……! ねぇ、あなた!」
「あ、あぁ、もちろん聞いたとも! そうか、そうかそうか、あのアンリがなぁ!」
あのアンリとは一体どのアンリなのか。
疑問が浮かぶも、尋ねたところで墓穴を掘りそうな気がするから黙っておく。頭ごなしに反対されずにほっとして、さっきまでの苛立ちはいくらか緩和されていく。
自分がセレナ以外の誰かと結婚するなど考えられなくなっていることに、さっきのお茶会での会話でアンリは改めて痛感した。
「――アンリよ、もしやもう決まった相手がいるのではないか?」
王妃とはしゃいでいた国王がこちらに顔を向ける。これまで結婚に関して何一つ口にしなかったアンリが、このようなことを突然言い出したのには訳があると思い至ったようだ。
国王の真剣な眼差しを受け、アンリは居住いを正した。
「実は、そのことについてご相談がございます――……」
何事かと息を呑んだ二人に、アンリは伝えるべき事情を静かに話し出した。
その間も、アンリの心を埋め尽くすのは、セレナだけ。
早くセレナに会いたい。会って、謝って、自分の想いを伝えたい。もう、カイルとして自分を偽らなくていいと、心の枷を取り払ってやりたい。
アンリの頭に清らかな美貌がはっきりと浮かぶ。
思えば一目惚れだったんだろう。
初めてセレナに会った日のことを、アンリは思い出していた。