絶対零度の王子殿下は、訳アリ男装令嬢を愛して離さない
 魔法陣の中心に立ち、魔導士長が詠唱すればアンリは一瞬で学園に飛ばされた。そして数秒後に現れた魔導士団のマントを付けた兵と一緒に、発動された自身の魔力を辿ってセレナのいる教室へと向かう。
 そこで目にした有様に、アンリは神経が焼き切れそうになるほどの怒りを覚えた。
 制服を着た男が、セレナに馬乗りになり服を脱がせていたのだ。
「殿下、お下がりくだ――」
 必死に押さえていた理性は一瞬ではじけ飛び、アンリは兵士の制止も無視してありったけの魔力を込めた攻撃魔法を男にぶつけていた。



 気を失ったセレナを寮部屋に運び、魔導士長に頼んですぐさま王宮の医師を内密に派遣してもらった。外傷はなく、拘束魔法を受けたことによる肉体的な負担と精神的疲労で眠っているだけだろうとの診断にようやく緊張の糸が緩んだ。

 しかし、数刻後に目を覚ましたセレナは、先ほどの恐ろしい出来事を思い出してパニックに陥り「汚い」と言いながら顔をかきむしった。傷つき苦しむ彼女の姿に、アンリはセレナを襲ったあの男を二度と立ち上がれなくしてやればよかったと心底思う。
 どうにか落ち着かせて傷を癒して、か細い彼女を抱きしめれば、彼女の瞳からまた涙がぽろぽろと零れていった。

 互いに謝り、誤解を解いていく。自分の言葉が足りないせいで、彼女を不安にさせてしまったことが申し訳なかった。

「どうして……、どうしてそこまでしてくださるのですか? 僕を守ると言ってしまった手前、義務を感じているのならそんなの気にしなくていいんですよ」

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