兄の結婚式で久しぶりに会った初恋の人と0日婚ということでお願いします
2話 廉からのお願い
それから二週間が過ぎた金曜日の夜、廉さんから電話がかかってきた。
「…廉さんの嘘つき…」
少し拗ねた声で香穂理は言った。
「香穂理ちゃん、ごめん!次の日の昼に仕事の電話がかかりこっちに戻ってきていてバタバタしていた」
「仕事なら仕方ないけどそれなら仕事って言って欲しかった…まあ、別に廉さんは彼氏じゃないからそんな怒らないけど」
「怒ってない?」
「うん、大丈夫(笑)」
「明日会えるかな?」
「バイト終わりからなら大丈夫だけど」
「何時?」
「1時」
「じゃあ店に迎えに行く」
「えっ?バイト先までお兄ちゃんから聞いてんの?」
「聞いてる、コーヒーショップだよな?」
「残念(笑)コーヒーショップのバイトは辞めたんだ、元彼がいたから」
「…そっか、じゃあ今はどんなバイト?」
「一ノ瀬(いちのせ)設計事務所でバイトしてる~」
「一ノ瀬か…確かにあそこは学生を雇う事が多い…でも気を付けろよ」
「何に?」
「…まあ、いい、じゃあ最寄り駅で待ってるから」
「わかった」
次の日香穂理はバイト先の一ノ瀬事務所に26日から5日まで年末年始の休みを申請した。
事務所も休みだから大丈夫だよと先生は快く休みを承諾してくれた。
土曜日は1時までの仕事の為、みんな一斉にお疲れ様でしたと事務所を出ていく。
「小澤さん」
「はい?」
「少しは慣れたかな?」
「はい…といってもまだ電話を取るくらいですが」
設計事務所の経理を担当している芦屋(あしや)さんという人が話しかけてきて一緒にビルから出てきた。
「駅に行くのかい?」
「はい」
「僕もだ」
あまり話したことがない人だけど香穂理はいつものように駅へ向かった。
芦屋さんはニコニコしながら話しかけてくる。
駅に着くと
「私、今日は駅で待ち合わせなんです、中には入らないのでここで失礼します」
「あぁ、そうなんだ、じゃあまた月曜日の夕方に」
「お疲れ様でした」
芦屋さんは駅の中に入っていった。
香穂理が少し待っていると黒いセダンタイプの高級車が香穂理の前に停まった。
運転席から降りてきたのは廉さんだった。
「香穂理ちゃん、お疲れ様」
「廉さん!」
「乗って」
助手席のドアを開けてくれた。
「ありがとう」
廉は運転席に回り車を発進させた。