君だけが、僕の世界
第5話 重なる影

『第5話 重なる影』


◯ねずみの国・人込みの中

・花火開始直前で人が多すぎて、月々と彩月が離れてしまう。月々が必死に背伸びして探す。
月々:「さっちゃん…!」
(心の声):(人の波に飲まれて、手が届かない。)

・気付いたら、彩月のファンらしき女子たちに囲まれていた。
ファンA:「一人で彩月くんを独占してどういうつもり?」
ファンB:「私たちの気持ちも考えてよ!」
・月々がきゅっと拳を握り、真っ直ぐに言い返す。
月々:「独占なんてしてない!…ただ、友達として一緒に楽しんでるだけ!」
ファンA:「じゃあなんで“さっちゃん”なんて呼んでるの?特別みたいに!」
月々:「呼び方くらい自由でしょ。私だって勇気出して誘ったんだから…!」

ファンB:「彩月くんはみんなのものなんだから!」
・月々が一歩も引かず、強い目で見返す。
月々:「さっちゃんは“もの”じゃないよ。人だもん。…それに、私がどう呼ぶかは私とさっちゃんの問題でしょ!」

・ドーン!と夜空に花火が上がる。ファンたちが一瞬黙り込む。月々は振り返るが、彩月の姿は見えない。
月々(心の声):(…花火、始まっちゃった…)

・人混みの中、ファンに囲まれていた月々の腕を結月がぐっと引く。
結月:レザージャケット、白Tシャツ、黒スラックス。
結月:「るー、こっち」
・月々が驚いて結月を見上げる。

・花火の光に照らされる結月の横顔。月々の脳裏に、子どもの頃病院で泣いていた時に助けてくれた男の子の姿が重なる。 月々(心の声):(…あれ?この感じ…夢で見たあの子と同じ…?)

・結月のスマホが鳴る。画面に「彩月」の文字。
彩月(電話越し):「月々ちゃんとはぐれたんだけど、結月どこにいるか知らない?」
結月:「今、一緒にいるから大丈夫。花火が終わったらそっち向かうよ」
・結月が電話を切る。

・月々が花火を見上げながら、悲しそうに唇を噛む。
月々(心の声):(さっちゃんと花火…見たかったのに…)
結月:「るーは俺が守る。…誰にも渡さない」
・月々が驚いて結月を見上げる。

・花火の光に照らされる結月の横顔。月々の脳裏に、子どもの頃病院で泣いていた時に助けてくれた男の子の姿が重なる。 月々(心の声):(…やっぱり…あの夢の子と同じ…?)
・隣で月々を見つめる結月。表情が曇り、何か言いたげに口を開く。
結月:「るー…実は――」
・その瞬間、轟音と共に大輪の花火が打ち上がり、言葉がかき消される。
結(心の声):(…結婚の約束をしたのは、俺だよ、なんて)

・夜空いっぱいに広がる花火。月々は結月を見つめ、結月は視線を逸らす。
・その間に漂う“言えなかった言葉”の余韻。
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