君だけが、僕の世界
第6話 記憶
『第6話 記憶』
◯教室・昼休み
・いつものように3人で机を囲んでお弁当を食べている。
・桜が口をもぐもぐさせながら話す。
桜:「しかし、残念だねー。結局、昨日一緒に花火見れなかったんでしょ~」
・月々が箸を止めて、少し複雑な表情を浮かべる。
月々:「それはいいんだけどさ…」
・日菜子が月々の顔を覗き込み、心配そうに。
日菜子:「月々、なにかあったの?」
・月々の回想(花火の日の場面がフラッシュバック。人混みの中で結月に手を引っ張られるシーン)
月々:「あのね…さっちゃんのファンに囲まれたとき、久我くんが私の手を引っ張って助けてくれたの」
・結月の大きな背中が強調される。
・月々が少し俯きながら。
月々:「子供の頃、よく助けてくれた男の子がいて…その子と久我くんが重なって見えて…」
・日菜子が真剣な顔で。
日菜子:「その男の子って、約束の男の子と同じ?」
・月々が少し間を置いてから頷く。
月々:「…そう、なの」
・桜と日菜子が「うーん」と考え込む。机の上には食べかけのお弁当。月々も箸を持ったまま、心の中で揺れている。
・日菜子が箸を置いて、真剣な顔で。
日菜子:「記憶の中の男の子が、2人って可能性もあるよね」
月々:「え?」
・桜が目を丸くして。
桜:「あ!約束の男の子と助けてくれていた男の子は違うってこと?」
・日菜子が肩をすくめながら。
日菜子:「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれないし…なんせ、双子だからね」
・月々が少し納得したように頷く。
月々(心の声):(そっか…。同一人物じゃない可能性もあるんだ…。じゃあ、尚更、どっちがどっちなんだろう?)
・月々が考え込んで訳が分からなくなっている。日菜子がそんな月々を見かねて、少し息をついて口を開く。
日菜子:「月々は、さっちゃんだったら嬉しいんだよね?」
・月々がコクっと頷く。
・日菜子が真剣な表情で。
日菜子:「だったらもう、約束のことなんて考えなくてもいいんじゃないかな?月々の中で、答えは決まってるようなものだし。ずっと約束にとらわれていたら、さっちゃんを他の人に取られちゃうよ」
・月々のハッとした表情。月々がねずみの国で彩月のファンに囲まれたことを思い出す。顔が強張る。
月々:「そう、だよね…」
・月々が窓の外を見つめながら。
月々(心の声):(そう言いつつも…やっぱり割り切れない。約束の子が誰なのか、どうしても気になっちゃう…)
・昼休みのざわめきの中、教室のドアがガラッと開く。彩月が立っている。
彩月:「月々ちゃん、ちょっといい?」
・教室が一瞬ざわつく。周囲の女子が「キャー」と小声で反応。
・月々が驚いて箸を落としそうになる。桜と日菜子がニヤニヤして背中を押す。
桜:「ほら来た!合法チャンス第2弾!」
日菜子:「行ってきなよ、月々」
・彩月が机の横まで来て、少し照れたように笑う。
彩月:「ちょっと話したいことがあるんだ」
・月々がドキッとして顔を赤くする。
月々(心の声):(…さっちゃんが私に…?何の話だろう…)
・教室の後ろの席。結月がじっとその様子を見ている。表情は曇り気味。
・双子の視線が交差する。
◯屋上・昼
・彩月が月々を連れて屋上へ。夕焼けが差し込む。風が少し吹いている。
彩月:「ごめんね、急に呼び出して」
・月々が少し緊張しながら頷く。
・彩月の真剣な表情。
彩月:「昨日…花火、一緒に見られなくてごめん」
・月々が驚いて目を見開く。
月々:「え…そんなこと、気にしてないよ」
・彩月が少し俯いてから、真剣に月々を見つめる。
彩月:「でも…俺は月々ちゃんと見たかったんだ。花火も、景色も…全部」
・月々が顔を赤らめて、胸を押さえる。
月々(心の声):(…さっちゃんが、そんなふうに思ってくれてたなんて…)
・月々が言葉を探しながら、視線を逸らす。
月々:「わ、私も…一緒に見たかった…」
・彩月がふっと笑って、空を見上げる。
彩月:「じゃあ、次は必ず一緒に見よう。約束」
・月々がドキッとして頷く。
月々:「…うん」
・屋上のドアの隙間から、結月の足が見える。
・2人の話し声を聞いている結月。表情は複雑で曇っている。
※場面転換
◯マンションの玄関前・夕方
・月々が自分の部屋の前でソワソワ。隣の扉をちらちら見ている。
月々(心の声):(もう2人とも帰ってきてるかな?…子供の頃の記憶、どっちがどっちなのか…いっそのこと本人たちに聞いてしまいたいっ…!)
・昼休みの彩月の笑顔を思い出して、顔が赤くなる月々。
月々(心の声):(それに…さっちゃんの笑顔…)
・部屋に入らずうろうろしている月々の前に、結月が帰ってくる。
結月:「あれ?何してるの?」
・月々がビクッとして振り返る。
・月々が慌てて手を振る。
月々:「えっと…その…」
結月:「…彩月なら、まだ帰ってきてないと思うよ」
月々(心の声):(いや、別にさっちゃんに用があるわけじゃないんだけど…さっちゃんに結婚の約束を聞くのは、なんだか恥ずかしいし…ゆづに聞けばいいよね?)
・月々が目線を逸らして口をつぐむ。結月はその様子を見て、彩月に会いに来たと勘違いして顔が曇る。
結月(心の声):(…やっぱり、るーは彩月のこと…)
・結月が居ても立っても居られず、月々に手を伸ばそうとすると、月々が少し恥ずかしそうに顔をあげた。
月々:「ゆづに、聞きたいことがあるんだけど…いい?」
・結月が目を見開いて月々を見つめる。
◯月々のお家、リビング
・テーブルの上にはお茶のコップ。向かいに座る月々。結月が少し面倒くさそうに頬杖をつく。
結月(心の声):(…えー。なに聞かれんだろ)
・月々が真剣な目で結月を見つめる。
月々:「…ゆづって、子どもの頃私のこと、よく助けてくれたよね?」
回想:病院で迷子になったときに道を教えてくれた男の子。寂しいときに遊びに誘ってくれた男の子)
・結月がテーブルの上で両手をギュッと握り締める。
結月:「そうだよ」
・月々の胸がドクンと鳴る。
月々(心の声):(…やっぱり)
・月々が少し震える声で。
月々:「じゃ、じゃあ…結婚しようって約束したのは、ゆづじゃないよね?」
・結月の目が見開かれる。月々の心臓がドキドキとうるさい。
・少し時間をおいて、結月が口を開く。
結月:「俺だよ」
・月々が目を見開き、泣きそうな顔になる。嬉しさと悲しさが混ざり合う。
月々(心の声):(さっちゃんじゃ、なかった…)
・月々が胸を押さえてズキッと痛む表情。
・結月がフッと笑う。
結月:「彩月だと思った?俺で残念だったね」
・クスクス笑うが、目の奥は笑っておらず、少し悲しそう。
・月々が慌てて手を振る。
月々:「べっ…別に残念とか思ってなくてっ…!」
・結月がじっと月々を見つめる。空気が張り詰める。
・結月がゆっくり身を乗り出す。テーブル越しに月々へ近づく。月々がドキッとして後ずさる。
月々(心の声):(…近い…!)
・結月が月々の顔を覗き込むようにして、低い声で。
結月:「じゃあ…俺でもいいってこと?」
・月々が顔を真っ赤にして固まる。
・月々が慌てて視線を逸らす。心臓の音がドキドキと響く描写。
月々:「そ、それは…っ」
・結月が少し笑って、肩から手を離す。
結月:「冗談だよ。…でも、俺は本気だから」
・月々が驚いて結月を見上げる。頬がさらに赤くなる。
・結月が椅子に腰を下ろし、少し照れ隠しのように視線を逸らす。月々は胸に手を当てて、鼓動を感じている。
・窓から差し込む夕陽。近い距離で向かい合う二人。お茶の湯気が揺れる中、月々の頬は赤く、結月の瞳は真剣。
結月:「…るーは俺だけ見てればいい。他の誰かに笑うくらいなら、俺にだけ笑って」
・月々が顔を真っ赤にして固まる。心臓の音がドキドキと響く。
月々(心の声):(――この鼓動は、約束のせいだよね?)