君だけが、僕の世界
第7話 初恋の終わり
『第7話 初恋の終わり』
◯玄関・朝
・月々が靴を履きながら心の声。
月々(心の声):(あれから、ずっと考えてる…。ゆづと、さっちゃんのこと)
月々(心の声):(私が今好きなのは、さっちゃん…。それだけで、いいはずなのに)
・玄関の扉を開けると、外には彩月ひとりだけが立っている。
彩月:「月々ちゃん、おはよ」
月々:「あれ…ゆづは?」
彩月:「寝坊。2人で先行っててだって」
・彩月がニコっと爽やかに笑う。朝の光が差し込む。
月々(心の声):(約束のこと考えるのは、もうやめよう!きっと、あのゆづの言葉も本気じゃないだろうし!)
フラッシュバック:昨日、リビングで結月に「俺は本気だから」と言われた場面。
・通学路を並んで歩く月々と彩月。月々は少し緊張気味。
彩月:「月々ちゃん、今日の放課後ヒマ?」
月々:「えっ、あ、うんっ」
・彩月が少し首を傾けて、月々の顔を覗き込むように。
彩月:「遠足の埋め合わせしてもいい?」
・月々の胸がきゅんと鳴る。
・月々が顔を赤くして、嬉しそうに答える。
月々:「いくっ!」
・テンション高めで答える月々。彩月がふっと笑う。
※場面転換
◯放課後・駅前
・待ち合わせ場所に立つ月々。少し緊張してそわそわ。
月々(心の声):(放課後にさっちゃんと2人きり…!遠足の埋め合わせって、デートみたいじゃん…)
・彩月が手を振りながら駆け寄ってくる。爽やかな笑顔。
彩月:「待たせた?」
月々:「ううん!」
・胸がきゅんと鳴る月々。
・並んで歩く。彩月が楽しそうに話す。
彩月:「遠足で行けなかった分、今日は色々回ろうね」
・月々が頷きながら、彩月の横顔を見て赤くなる。
◯買い食いシーン・外
・屋台でクレープを買う彩月。月々に差し出す。
彩月:「はい、あーん」
・月々が慌てて受け取る。顔が真っ赤。
月々:「じ、自分で食べるからっ!」
◯公園のベンチ・夕方
・二人で並んで座る。彩月が空を見上げる。
彩月:「さすがに花火は、また今度だね」
・月々がドキッとして彩月を見る。
・月々がドキドキしながら話題を続けようと口を開く。
月々:「そ、そういえば…私、小さい頃にゆづと結婚の約束とかしちゃったらしくてっ…」
月々(心の声):(いくらドキドキしてるからって、この話題はないでしょー!)
・心の中で涙を流す月々。
・彩月が急に立ち上がって、驚いたように目を見開く。
彩月:「…それ、覚えててくれたの?」
月々:「え?」
・月々が目を見開き、彩月の言葉に動揺する。
月々:「覚えててくれたって…この約束って、ゆづじゃ…」
彩月:「その約束の相手は俺だと思う」
・彩月が恥ずかしそうに口元に手を当てる。その仕草にさらに混乱する月々。
月々(心の声):(待って、ほんとに…?さっちゃんの顔は嘘をついているようには見えない…)
・月々が不安そうに彩月を見つめる。
月々:「ゆ、ゆづが…その約束は自分だって…」
・恐る恐る問いかける月々。
・彩月が少し考えるように視線を逸らし、そして笑う。
彩月:「うーん…俺ははっきり覚えてるけどな。シロツメクサの冠」
・月々がハッとする。
フラッシュバック:夢に出てくる男の子がシロツメクサの冠を月々に渡す場面。
ナレーション:――その瞬間、夢の中の男の子と彩月の姿が重なった。
・月々が胸を押さえながら。
月々(心の声):(シロツメクサ…間違いない。あれは、さっちゃんだ…)
・彩月が少し真剣な顔で。
彩月:「そもそも結月は頻繁に外出れるような状態じゃなかったよ」
・ドクン、と胸が嫌な音を立てる描写。
彩月:「難しい病気だったし、ほとんど寝たきりだった気がするけど…」
・月々が息を詰める。目を見開いて動揺。
回想:子供の頃、病室にいる結月を訪ねる月々。ベッドに横たわる結月は何本もの管に繋がれている。
ナレーション:――思い出す。結月からではなく、私の方から病室に会いに行っていたこと。
回想:元気な時でも、結月はイルリガートルを持ち歩いていた。笑顔はあるけれど、身体は弱々しい。
月々(心の声):(…そうだ。ゆづは、あの頃ほとんど外に出られなかった…)
・現在に戻る。
・月々が彩月を見つめる。混乱と切なさで涙がにじむ。
月々(心の声):(さっちゃんの言うことが本当なら、ゆづは私に嘘ついてる…。なんで?どうして…?約束をしたのは、さっちゃんかもしれないけど、いつも助けてくれたのはゆづのはずなのに)
・彩月が月々を見つめる。頬が赤い
彩月:「だから、その約束は俺だと思うよ」
・彩月が顔を真っ赤にして微笑む。その姿につられて月々も頬が赤くなる。
彩月:「覚えててくれて嬉しい…」
月々:「そりゃ、覚えてるよ…」
・月々が胸に手を当てる。ドキドキとうるさい心臓の描写。
ナレーション:――止まらない鼓動。真実と想いが重なり、月々の心はさらに揺れていく。
彩月:「あのとき…子どもだったけど、本気で言ったんだよ、俺」
・彩月が月々をまっすぐ見つめる。夕陽が差し込む。
彩月:「俺は、ずっと月々ちゃんと一緒にいたいって思ってる」
・月々の胸がドクンと鳴る。
・月々が赤くなって俯く。彩月の真剣な瞳と、結月の「俺は本気だから」という言葉が重なり、心が揺れる。
※場面転換
◯玄関前・朝
・月々が外に出ると、ちょうど隣の部屋から彩月が出てくる。
月々(心の声):(昨日のこと思い出すと…恥ずかしい…でも普通に挨拶しなきゃ!)
月々:「さっちゃん、おはよう」
・彩月が目を泳がせ、気まずそうに下を向く。
彩月:「お、はよ…俺、今日先に行くし結月と来て!」
月々:「え?」
・彩月が「ごめん」と顔の前で手のひらを合わせる。月々とは一度も目を合わせずに足早に去っていく。
・月々が玄関前に一人取り残される。
月々(心の声):(えっ…ん?どういうこと?)
・月々が立ち尽くし、不安そうに唇を噛む。
月々(心の声):(何かしたかな?…あきらかに避けられてた気がする…)
・月々が玄関前でしゃがみ込み、考え込む。
・ドアが開き、結月が出てくる。しゃがみ込む月々を見て少し驚いた顔をする。
結月:「…何してんの?」
・月々が顔を上げる。動揺と不安が入り混じった表情。
・月々が立ち上がり、勢いよく結月に泣きつく。
月々:「私、さっちゃんに何かしちゃったのかも…」
・結月が少し驚いた顔をする。
結月:「どういうこと?というか、彩月は?」
・月々が涙目で訴える。
月々:「私、避けられたかもっ!さっちゃん、一人で行っちゃった~!」
・結月が一瞬驚いた顔を見せるが、次の瞬間口角が上がる。その変化に月々は気付いていない。
結月:「へ~。るーが、なにかしちゃったのかな」
・結月が少し柔らかい笑みを浮かべ、月々に向かって。
結月:「俺でよかったら話聞くよ?」
・泣いている月々をぎゅっと抱きしめる結月。
・ハッとして顔をあげる月々。結月の胸の中で睨む。
月々:「ってか、結婚の約束!ゆづ、私に嘘ついたでしょっ!」
・結月がクスっと笑う。余裕のある表情。
結月:「ばれたかー」
月々:「ばれたかじゃないよっ!なんで嘘ついたの?それに、離してっ」
・結月の腕の中でじたばたする月々。必死に抜け出そうとするが、なかなか離れられない。
結月:「嘘ついたのは謝るよ。でも、もう離すわけないじゃん」
・月々が顔を真っ赤にして叫ぶ。
月々:「いっ、意味分かんないよっ!」
・結月の腕にさらに力がこもる。月々の背中がのけぞり、驚いた表情。
ナレーション:――強く抱きしめられる感覚に、逃げ場を失う。
結月:「だって、るーは俺のものだから」
・結月の瞳が真剣で、少し危うい光を宿す。
月々(心の声):(お、重いっ…!)
※場面転換
◯教室
・月々が疲れ切った顔で教室の扉を開ける。後ろには満足げな結月がついてくる。
桜:「おはよー!って、朝から疲れ切ってる!」
桜(心の声):(それに比べて、久我くんは…なんでそんな満足そうなの?)
桜:「ちょっと、ちょっと…朝からなにごと?」
・桜の隣にはチュッパチャップスを舐めている日菜子。無言でじっと様子を見ている。
・月々がげっそりした顔で答える。
月々:「ちょっとね…」
月々(心の声):(ゆづに全体重乗せられて疲れたのと、なぜかさっちゃんに避けられてるのと…)
・桜が心配そうに覗き込み、日菜子もチュッパチャップスを止めて月々を見つめる。
◯廊下・昼休み
・月々が俯きながら歩いている。ため息をつく。
月々(心の声):(今日はほんとに疲れた。帰ったら、さっさと寝よう。とりあえず、寝よう)
・突然、月々の前に影が落ちる。顔をあげると女子3人が立ちはだかっている。
ファンA:「ちょっと、ツラ貸せよ」
・月々がひきつった顔になる。汗が一筋流れる。
月々(心の声):(…さっちゃんのファンの子たちだー!)
・女子3人が月々を囲むように立ち、廊下の空気がピリッと張り詰める。月々は小さく肩をすくめる。
◯校舎裏
・月々の背中は壁。前には彩月のファン女子3人が立ちはだかる。
月々(心の声):(遠足の時と同じ人たち…今度は何の用なの?)
ファンA:「あんたさ、今日は結月くんを独り占め?」
ファンB:「調子乗りすぎだって」
・月々が上から睨みつけられ、少し怖気づくも拳をぎゅっと握る。
月々(心の声):(さっちゃんのファンじゃなかったの?ゆづもだめなの!?)
・月々が口を開きかけて、すぐに閉じる。
月々(心の声):(ここで言い返したら、今度こそもっと酷いことされるかもしれないし…)
・ファンAがクスクス笑いながら。
ファンA:「身の程わきまえろよ」
・それだけ言って3人は去っていく。
・月々が壁に背を預けて、はぁとため息をつく。
月々(心の声):(一緒にいるのに、幼なじみっていう関係は弱いのか…。いちいち私にけん制してこなくったって、さっちゃんもゆづも誰とでも仲良くすると思うんだけどな)
・月々が胸に手を当てる。少しチクッと痛む表情。
※場面転換
◯公園のブランコ・夕方
・月々がブランコに座り、膝に頬杖をついてため息をつく。夕焼けが差し込む。
月々(心の声):(あぁ~、帰りたくないな…。今日は早く帰って寝る予定だったのに。なぜか今は部屋で一人になりたくない)
・俯いている月々の前に影が落ちる。顔を上げると結月が立っている。
結月:「こんなところで、なにしてるの?」
・月々が「げ」という顔を見せる。
・結月がニコっと笑う。軽い調子で。
結月:「どうしたの。今日、朝から様子おかしいし」
・結月が月々の目の前にしゃがみ込み、月々の膝に両腕を組んで乗せる形。距離が近い。
月々(心の声):(あんたのせいだよ!)
・月々が結月の顔を見て、昼休みに彩月のファンに囲まれたことを思い出す。再びため息をつく。
ナレーション:――思い出すだけで胸が重くなる。
・結月が月々の前にしゃがみ込み、鋭い目つきで見つめる。優しさは欠片もない。
結月:「ねぇ、また彩月のこと考えてんの」
月々:「え…」
・結月の表情が冷たく変わる。月々が息を呑む。
結月:「なんで、彩月がるーを避けてるのか教えてあげようか」
・月々の目に涙が滲む。
月々(心の声):(やっぱり…避けられてたんだ…)
・結月がさらに低い声で告げる。
結月:「彩月、彼女できたんだって」
・月々が衝撃を受け、言葉を失う。口がわずかに開いたまま固まる。
・言葉を失った月々の顔を見て、結月がなぜか満足そうに口角を上げる。
・月々が涙目で結月を見つめる。
月々:「う…うそ」
・結月が軽い調子で肩をすくめる。
結月:「嘘じゃないよ。昨日の夜、そう言ってたし。それが原因で朝一人で行くとはさすがに思ってなかったけど~」
・月々が俯き、涙が滲む。
月々(心の声):(嘘だ…。だって、さっちゃんあんなに嬉しそうにしてくれたじゃん。約束の話、本気で言ったんだよって言ってくれたじゃん。私とずっと一緒にいたいって…)
・ポロっと涙が落ちる。頬を伝う雫が夕陽に光る。
・その表情を見た結月が勢いよく立ち上がり、月々を強く抱きしめる。
・月々が結月の胸に顔を埋め、唇をかみしめながら涙をこらえきれずに流す。
月々(心の声):(終わった…。終わったんだ、私の初恋…)
・月々が結月の背中にしがみつく。肩が震えている。
・結月が上から優しい声で囁く。背中を子どもをあやすようにトントンと叩く。
結月:「るー。俺は、ずっとるーのそばにいるよ」
・結月の瞳が少し鋭く光る。口元には満足げな笑み。
結月(心の声):(やっと…ここまできた。もう少しで、るーが俺のことを見てくれる…)
・夕焼けの公園。ブランコの横で抱き合う二人。月々は涙に濡れ、結月は満足げに微笑む。