Existence *
「え、なに?そう言うのって気になんの?」

「いや、気になるって言うか…」


つかそれを聞いてくる時点で気にしてるじゃねぇかよ。

むしろ、またなんでそんな事…


「分かんねぇけど、美咲より低いんじゃねぇの?」


そんな話なんて今まで一度もしたことがなかったから、美咲がいくら…とか考えた事もなかったし、別に考える必要もなかった。

ビールを飲み干し、また新たに新しいビールを取り出した俺はタバコの箱を掴んでベランダへ出る。


そして手すりにビール缶を置き、咥えたタバコに火を点けた。


「ねぇ、それはないと思うけど」


そう言いながら美咲は俺の隣に来て俺に視線を向ける。


「うん?…なに?やっぱ一緒に居るのに気になる事?」


タバコの煙を吐き出しながら俺は美咲に視線を向ける。

普通がわからない。

普通は気にするものなんだろうか。


「いや、違うの…」


戸惑うように美咲が小さく言葉を漏らす。


「違うって?」

「天野さんが言ってきたの」


天野さん?

一瞬誰だか分からなかった。

だけど、昨日の美咲の生徒の事を思いだし、


「あー…昨日の?」


そうかどうか分からないが、思い出す様に呟いた。


「そうそう」

「で、なに?」

「翔がNO1だって事は知ってたし、そんな事興味なかったから聞かなかったけど、月給3千万の時もあったってホント?」

「……」


まさか、今になってそんな話が美咲の口から出てくるなんて思ってもみなかった。

むしろもう辞めて半年は経つ。

当時はそんな話、一言もしてこなかった美咲が、なんで今更…


「ねぇ、翔?」


俺の名前を呼ぶ声に、俺はボンヤリと目の前の夜景に視線を送る。

そんな事今更聞かれても、困る。

美咲に腕を揺すられ、ハッとし「うん?…あぁ」そうだったなーなんて思いながら小さく呟いた。
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