Existence *
「信じらんない」

「つか、信じらんないって…」


思わず苦笑いが漏れてしまった。

まぁ、そうだな。

今から考えると俺も信じらんねぇわ。


毎日、必死でやってきてたからな。


「あのさ、今更ながらに言うけど、翔がやってた事とか、私が知らなかった事が今更ながらに気になるの」

「……」

「だから天野さんに聞いてなんか複雑な気分になったって言うか…なんて言うか…」


どうしようもないって感じで話してくる美咲に思わず声に出して笑ってしまった。

そんな言葉が美咲から聞けるなんて思ってもみなくて。

むしろ、俺にとっちゃ当時のあの頃に言ってほしかったようなもんだった。

あの頃の美咲は全くと言っていいほど、何も言ってこなかったから。


だから逆に俺は嬉しくなった。

そう思ってくれていることが。


「お前、可愛いな」


笑いながら美咲の頭を撫ぜると、美咲は顔を顰める。


「営業トークやめてよ」

「俺、今違うから」


美咲の頭から額に指を動かし、美咲の額を軽く押す。

グランと揺れた頭を美咲は軽く擦り、そんな美咲を見ながらタバコを咥え俺はまた笑った。


「やっぱさ…」

「どした?」

「辞めた事に憂鬱勘とか抱くでしょ?」

「憂鬱勘?」

「ほら。今は私と同じくらいだとしても前よりかは比べ物にならないくらい減ってるじゃん?そう言うのって嫌じゃないのかなって」


その言葉でさっきまでの俺の笑みが消える。

タバコを口から離し、ゆっくりと煙を吐き出していく。

それはどう言う意味だろうと思った。


辞めた事に憂鬱勘?

そんなもの一切ないし、この半年間、全く思わなかったこと。
< 104 / 119 >

この作品をシェア

pagetop