Existence *
そう。

あの日から美咲の様子が変だと言う事は薄々気づいていた。

だけど俺はそれに触れることはなかった。


ただ美咲の中にある何かの不安を抱くことで解消する事しか出来なかった。


「なんだかなぁ…」


思わず呟き、久々に訪れたのは病院。

お母さんじゃなく、俺のほう。


「…翔くん、ここに来るの久々じゃん」


診察前で待ってる俺に実香子の声で顔を上げる。


「お前、どこにでも居んのな」

「どう言う意味?」

「病棟じゃねぇの?」

「診察室に来ることだってあるわよ」

「そう」

「どうしたの?浮かない顔して」

「いや、別に」

「また体調悪くなってんの?」

「そうかもな」

「飲み過ぎだよ」

「全く飲んでねぇわ。1日飲まねぇ日もあるし」

「あー…、そか。美咲ちゃんと何かあったの?」


クスクス笑う実香子に俺は顔を上げ、実香子を見つめると更に笑みを零した。


「いや、別に何もねぇし」

「あ、そう」

「昨日、久々に美恵さん見に行ったよ。元気そうだった」

「ありがとう」

「翔くんも、今は薬飲んでないからって気を抜いちゃダメだよ」

「はいはい」

「じゃあね」


実香子と別れ、そして診察が全て終わると、俺はお母さんが居る病院へと向かった。

病室へ入ろうとしたところで、中から担当医が出て来る。

軽くお辞儀をされ、足を進ませるその医師を俺は呼び止めた。


「あの、すみません…」

「はい」

「どんな感じですか?」

「今の所、安定してます」

「いつ頃から検診に来てないんでしょうか?」

「3年前までは確実に来られていました。そこから徐々に来ていらっしゃいませんね。その間、かなりの無理をされてたのだと思いますが」

「……」

「仕事が手放せないと仰って何度かキャンセルされてました。その所為かストレスもあったと思うのでそれが原因で進行が早かったのだと思います」

「……」

「2ヶ月って伺いましたけど、それ以上の可能性はありますか?」

「可能性は極めて低いと思います。進行が速すぎて転移箇所が思ったよりもあります――…」


3年前までは確実に行っていた病院が、それ以降は行かなくなっていた。

俺が丁度、入院して、その後必死で朝夜問わず仕事に明け暮れていた時期。


病院に行ってるものだと思い、俺は自分の事で必死だった。

その時期から――…
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