Existence *
「いやさ、一度、蒼真さんに鍵貸したことあんだわ。それこそお前と同じで勉強したいってな」

「あー…そうなん?」

「んじゃあさ、桃華さんが怪しがって一緒にここに来たわ。それをふと思い出した」


懐かしそうに思い出して笑う蓮斗に俺も声を出して笑う。


「まぁ、蒼真さんはなー…、普通にあの人怪しいから」

「まじでな」

「でも桃華さん愛がマジで重い」

「それはお前もだろうが」

「俺はあんまり語らん」

「あぁ、そっか。そこが逆に怪しいわ」

「は?意味分かんね」

「女って妙に疑うからな。俺も事務所の鍵何個か持ってんだけどさ、梨々花に問い詰められたわ」

「へぇー…梨々花そんなん気にすんのかよ」

「あいつも女って事」

「なんだ、それ」

「好きな奴、出来てたら別れるっつーの」

「それ今も健在してんの?」

「するわけねぇだろ。二人目出来んのに、他の女に目がくらむ暇もねぇわ」


クスクス笑う蓮斗に交じって、今まで仕事に集中していた瑛太(えいた)の笑い声が聞こえる。

パソコンから視線を外し、俺らに向かって笑みを飛ばしてきた。


「もー、なんすか。その昔話」

「いや、翔も気をつけろよって話な」

「梨々花さん時は蓮斗さん、マジめんどくせぇっつってたもんな」

「あの時、色んな鍵持ってたからなー」

「ま、俺からしたら蒼真さんが一番おもろかったっす」

「え?なにやらかしたん?」


瑛太の言葉に俺が視線を向けると、思い出したかのように瑛太は声を上げて笑い出した。


「いや、あん時さ、真夏で外から蓮斗さん帰ってきて暑いからってシャワー浴びたんすよ。んで、がっつり刺青入った上半身裸のままで居た所に桃華さんが来たっつー事があって、」

「まじかよ」

「もちろん桃華さんマジでビックリして、今度は浮気とかじゃなくて、闇金とか極道とかそっちの疑いがもたれてましたもん」

「ははっ、そりゃそうなるわな」

「しかも裸のままタバコ吸ってて、見るからに健全な事務所じゃねぇの」

「そうだった、そうだった。あの後、お前の所為だからどうにかしろよ。とか言われたわ」


ケラケラ笑う瑛太に俺までも笑いが止まらなくなる。

ま、初めて見るこいつは誰でもそうなるわな。
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