Existence *
「…あれ?翔がパパだっけ?」


そして美咲の言葉に更に苦笑いが漏れる。


「なんか、香恋。芹沢さんをパパだと勘違いしてるっぽい…」

「えっ、…てかそんな事ってあるの?」

「うーん…そりゃ諒也をパパだと分かってるけど、でも何でか芹沢さんのほうが懐くの」

「えー…そうなんだ。諒ちゃん、怖い顔してるもんねぇ…パパだと思いたくないよね」


おいおい、そんな事言ったら諒也怒んだろうよ。と、思った瞬間、


「ちょっと、美咲っ、」


葵ちゃんの甲高い声が響き、香恋が振り向いた。

そしてその視線がもう一度俺に向き、香恋はニコッと微笑む。


「翔くん」

「うん?」

「翔くん」

「どした?今日の香恋、おとなしいな。知らねぇお姉ちゃん居っからか?」

「おねぇちゃん?」

「そう」


また不思議そうに香恋は美咲を見ると、美咲は俺たちの横に来て香恋に両手を差し出した。


「香恋ちゃん、おいで?」


美咲がそう言ったものの、香恋は全く動かず俺にしがみつく。


「嫌だって」

「まだ何も言ってないじゃん」


顔を顰めて眉を寄せる美咲は俺の肩を叩く。

そんな美咲に香恋は不思議そうにまだ見つめてた。


「だって行こうとしねぇじゃん」

「初めて会うからだよ」

「この姉ちゃん、みぃちゃんって言うの」

「み」


香恋の顔を覗き込んで、そう伝えると、香恋が小さく呟く。

その言葉に俺は思わず声に上げて笑った。


「あはは。お前、“み“だってよ」


案の条、美咲からは不貞腐れた表情で俺に視線を送る。


「おじちゃん嫌だねー」

「おじちゃんじゃねぇし。…な?」


香恋を見つめて、そして高く高く持ち上げる。

キャーキャー声を上げて蔓延の笑みを漏らす香恋の気が済んだところで俺はそのまま香恋を下ろした。
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