Existence *
「考えてないわけでもない。でも、今は無理」

「あ、そう」

「俺自身ちゃんと出来てねぇし、今は仕事優先したい」

「仕事優先ってお前、昔から仕事優先じゃねぇかよ。仕事ばーっかしてんだろうよ。お前の脳内は仕事しかねぇのかよ」

「お前もだろ」

「言っとくけど俺、お前よりかは働いてねぇからな」

「あぁ、そうかよ」


フッと笑った俺に「仕事戻るわ」そう言って蓮斗はこの場を離れる。

蓮斗に言われたように、この先の事を考えてないわけでもない。


5年前、離れる時に美咲に言った言葉。

結婚しよ。

何を根拠にそんな事言ったのかは今、思うとあの頃の自分が不明のままだった。


ただの5年間の繋ぎだったとそう思った。

でも、今日、美咲に会って、その言葉が実感させられたようにも思えた。


でも今じゃないのは確かで。

俺がまだ何もちゃんと出来ていない。

未熟なままで、自分自身が固まっていなくて。

そんな事を最近思って。


沙世さんもだけど、この先の事を考えてんの?って、その言葉を言われるたびに、余計なお世話。なんて思ってしまう。

周りが結婚していくからって、そこに逢着する事も焦ってるわけでもなくて。


仕事優先って訳じゃないけれど、今のこの曖昧のままでの先が見えてこない。


作業が一段落したのは19時を回った時間だった。

一旦帰宅して風呂に入り、そして仕事関係者の人といろんな話をする。


と言っても事業の事ばかり。

ホスト業界の時からいろんな職業の人と出会って来た所為か、いつかは企業を興そうとずっと思っていた。


ホストはホストなりに楽しくさせてもらったけど、あの業界へ戻ろうとは全く今でも思わない。

だけど、この事に関しては美咲には言うつもりなど全くなかった。


ちゃんと俺がこの先の地位に定まってから――…
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